『鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成』役者の演技に納得感 思い出す原作&アニメの熱狂ぶり
今回の実写化は、2017年公開の『鋼の錬金術師』から始まったものだ。エドをHey! Say! JUMPの山田涼介が演じ、髪型も服装も義手や義足の雰囲気も漫画やアニメから抜け出たような感じを巧妙に再現していた。敵となるホムンクルスたちは、本郷奏多が演じるエンヴィーも松雪泰子のラストも内山信二のグラトニーも誰もが完璧だった。欧州風の舞台であっても、荒川が描くキャラがリアル寄りではなかったことも手伝って、特徴をつかめば雰囲気は出せた。
ただ、原作の壮大な設定をすでに知ってしまっていると、序盤にすぎないエピソードが実写化されてもそれほど関心を向けられない。だからこそ、完結編と銘打たれた『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー』と『最後の錬成』が連続して描かれると聞いた時、遠い過去から現在へと連なる戦いと、国全体を巻き込んだ謀略がどのように描かれ、その上でエドやロイ・マスタングがどのような戦いを見せるかといった興味を誘われた。
実写版で初登場となるスカーやアレックス・ルイ・アームストロングとオリヴィエ・ミラ・アームストロング、キング・ブラッドレイ大総統といった面々の再現度も気になったが、映画を見終わった人ならそのあたりへの不満はほとんどないだろう。『シン・ウルトラマン』(2022年)でメフィラスを演じて胡乱さを振りまいていた山本耕史は、肉体を見せびらかせて戦うアレックスになりきっていた。栗山千明はふっくらとした唇を持ったクールな美女のオリヴィエを、他にいないというハマり具合で再現していた。
内野聖陽が二役を務めたホーエンハイムとお父様は、メイクから喋りまですべてが漫画とアニメのキャラそのままだった。全体にキャラへのなりきり具合が良かっただけに、展開が漫画やアニメの要所要所をかいつまんで見せては次へと移る、ダイジェスト的なものになっていたことが惜しまれる。エドとアルの師匠にあたるイズミ・カーティスなど完璧なまでの再現度だったにも関わらず、アメストリスの全国民を使った実験に必要な人柱のコマとして、揃えられただけにしか見えなかった。
ディーン・フジオカが演じたマスタングに、漫画やアニメとは少し違った結末を迎えさせたことを気にする声もある。時間的な制約から、エピローグ的な物語を付け足せなかっただけかもしれないが、ハンディを負っても意思があれば歩いて行けることを表現したとも解釈できる。ディーン・フジオカにしか見えなかったマスタングや、実写版第1作の大泉洋や小日向文世にしか見えなかったりするキャラたちについても、それぞれが持つ役者の個性を目の当たりにできた。
超ベテランの舘ひろしによるキング・ブラッドレイは、髪型など舘そのままだったが、誰にも負けない凄みで役をねじ伏せていた。役として納得させられれば見かけなど気にしなくて良い好例だ。そもそも『鋼の錬金術師』にはすでに、壮大な展開を経て描き終えられた漫画があり、それをハイクオリティの作画によって描ききったアニメがある。実写は、そんな作品の世界に生身の役者がどう向き合うのかを確かめる場と思えば良いのだ。
▰#ハガレン完結編
〖オフショット解禁📸〗エドワード・エルリック役#山田涼介 さん
アルフォンス・エルリック役#水石亜飛夢 さん
仲睦まじい兄弟のオフショットを解禁!エルリック兄弟の再会の瞬間、
ぜひ劇場で見届けてください!『鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成』
🎬大ヒット上映中 pic.twitter.com/biGPncbW6j— 映画『鋼の錬金術師 完結編』公式 (@hagarenmovie) June 27, 2022
山田涼介はエドに挑んで役と役者のバランスに自分なりの答えを見せていた。ファンとしては十分だろう。『キングダム2 遙かなる大地へ』でも山崎賢人をはじめ大勢の役者たちが、漫画やアニメの世界に挑む。その後も続々と続く漫画やアニメの実写化を、これは違うと嘆くよりも役として納得できたと思うなり、役者に説得されてしまったと感じながら、世界観はしっかり伝わってきたと感じる方が人生は楽しい。
※朴ロ美のろは「王へん」に「路」が正式表記。
※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記。
参照
※1. https://www.itmedia.co.jp/makoto/articles/0910/09/news003_4.html
■公開情報
『鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成』
全国公開中
出演:山田涼介、本田翼、ディーン・フジオカ、蓮佛美沙子、本郷奏多、黒島結菜、渡邊圭祐、寺田心、内山信二、大貫勇輔、ロン・モンロウ、水石亜飛夢、奥貫薫、高橋努、堀内敬子、丸山智己、遼河はるひ、平岡祐太、山田裕貴、麿赤兒、大和田伸也、舘ひろし、藤木直人、山本耕史、筧利夫、杉本哲太、栗山千明、風吹ジュン、佐藤隆太、仲間由紀恵、新田真剣佑、内野聖陽
原作:荒川弘『鋼の錬金術師』荒川弘(『ガンガンコミックス』スクウェア・エニックス刊)
監督:曽利文彦
脚本:曽利文彦、宮本武史
企画・制作プロダクション:OXYBOT
配給:ワーナー・ブラザース映画
製作:映画「鋼の錬金術師2&3」製作委員会
(c)2022 荒川弘/SQUARE ENIX (c)2022 映画「鋼の錬金術師2&3」製作委員会
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