美しくも冷酷なアクションに鋭い観察眼 ディーン・フジオカが作品ごとに加えるスパイス

ディーン・フジオカが作品に加えるスパイス

 ディーン・フジオカが主演を務める『パンドラの果実〜科学犯罪捜査ファイル〜 Season1』(日本テレビ系/以下『パンドラの果実』)は、自我を持ったAIロボット、脳内チップを埋め込まれたプロeスポーツ選手、亡くなった人に会えるVRなど、毎週、最先端の科学を絡めた題材を扱い、驚くような切り口で物語を紡ぐ。だが本作に描かれるのは、科学という未知の領域でのあくなき探求心に引き起こされる悲劇の物語だけではない。そこにあるのは一人の男が家族に向けた強い愛の物語でもある。そしてその男こそが、ディーン・フジオカ演じる小比類巻祐一だ。

 科学の進歩が追いつき遺体が蘇生される日まで、愛する妻・亜美(本仮屋ユイカ)を冷凍保存しておくという小比類巻のアバンギャルドな発想に加え、モニター越しに冷凍死体に話しかける姿に、初めは驚きを隠せなかった。だが、小比類巻はある事件の捜査をきっかけにVR(仮想現実)「ジョイン」の世界に入りこみ、死んだはずの妻と再会を果たす。小比類巻の「科学は私にとっての光」を体現したかのような第4話は、小比類巻から妻への大きな愛が強く確信できた回であると同時に、ディーンの切なく優しい芝居が最も光る回でもあった。ディーンの潤んだ瞳は視聴者の感情を激しく揺さぶり、小比類巻がどんな思いで家族と向き合ってきたのかが、じわりと心に染みる。

 そして、ディーンがこれと対照的な姿を見せたのが第9話である。愛娘・星来(鈴木凜子)の誘拐事件で敵を追い詰め痛めつけたときの、感情を抑えた演技とその無機質な瞳には恐怖さえ感じる。中国武術、ボクシングを趣味とし「第5回ジャパンアクションアワード ベストアクション男優賞 優秀賞」を受賞した、ディーンならではの美しくも冷酷なアクションシーンによって作品には新たなスパイスが加わる。 

『鋼の錬金術師』(c)2017 荒川弘/SQUARE ENIX (c)2017 映画「鋼の錬金術師」製作委員会

 これまでも数多くの作品に出演し、様々なキャラクターを演じてきたディーン。『空飛ぶタイヤ』(2019年)では第42回日本アカデミー賞 優秀助演男優賞も受賞し、その実力は高く評価されている。どんな役もしっかりと自分のものにしてきたディーンだが、彼の芝居が最も生きるのがコミックの実写作品『鋼の錬金術師』シリーズのロイ・マスタング大佐や、古典文学を原作にした『モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐―』(フジテレビ系)の柴門暖/モンテ・クリスト・真海だろう。コミックの実写や古典文学を原作とした作品はどうしても、現代の日本とは馴染みの薄い舞台設定や、現実離れした行動・セリフのキャラクターを演じなければならない。しかしディーンの手にかかれば、これらの難しい設定やセリフもすっとなじんでしまう。外国暮らしを経験しており、スラリとした高身長に多才なスキル。無国籍な空気感は、本来なら違和感にもなってしまいそうな突拍子もないキャラクターでさえも、キラキラとした魅力に変えることができるのだろう。



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