街山みほ×佐藤周×いまおかしんじ、新鋭×ベテラン初コンビで描いた『ヘタな二人の恋の話』

『ヘタな二人の恋の話』インタビュー

ミニマムな表現で7年の時間を表現する

――1日の撮影のなかで、何年もの時間が経過したシーンを撮るのは、大変でしたか?

街山:ついていくのに必死でした。でも、メイクとか衣装がガラッと変わるので、そこが自
分の気持ちの入れ替わりになったのかなと思います。

佐藤:衣装を、年ごとにわかりやすく変えようというのはありましたね。それから、二人の
会話のテンポや雰囲気を変えました。個人的にこだわったのは、最後の綾子の衣装をどうす
るか。そこは一番こだわりましたね。特に説明がないので、衣装だけでわかるようにしたい
という想いがあったんですよね。

――時間経過も「はじまりの夏」「その先の夏」というテロップだけで、長い年月の流れを
説明的に描いていないのが良かったですね。

いまおか:年号を入れたり、小道具で表すんじゃなくて、なんとなくのニュアンス、二人の
関係性で持っていけばいいかなとは思ったけどね。

――小道具といえば、2人が拾ってきた設定の冷蔵庫が効果的でしたね。

いまおか:ガランとした部屋に、「何にもないのは寂しいから何かない?」って、プロデューサーから言われて、冷蔵庫を置いたらビジュアル的に印象的になるかなと思いました。

佐藤:それで、冷蔵庫に意味を持たせたいよね、みたいな話になって、思った以上に活躍す
る小道具に昇格しましたね(笑)。

――ロケーションも印象的な風景が選ばれていました。

佐藤:制作部さんが本当に優秀な方々だったので、基本的にお勧めの場所に行って撮ってい
たんですけど、それ以外に印象的な場所が欲しいと話していたんですよ。二人が何かをする
度に、ここが出るみたいな。それが映像に出てくる坂の、高台になってるところです。あの
場所はこだわりましたね。

「白くまアイス」が登場する理由

――この映画は、“性”と共に、“食”という部分もすごく丁寧に描かれているなと思ったんですが、劇中に何度も登場する白くまアイスが特に印象深いですね。

いまおか:これは思い付きで、コンドームをつけてるときって、間が空くじゃないですか。
その気まずい時に、綾子が「何か話してよ」って言うんです。そういうときに、適当に喋る
ことって何かなと思ったら、地球温暖化だなと。

佐藤:その流れはよくわからないですけど(笑)。

いまおか:祐太が「地球温暖化で白くまの数が減ってるんですよね」って、昨日見たニュー
スをそのまま言ったのを受けて、綾子の「私、白くまアイス、好きなんだよね」ってセリフ
が出てきて。そこから急に、白くまアイスがやたらと出てくるようになった(笑)。

佐藤:だから、脚本に書かれているとおり、制作部さんに白くまアイスを買ってきてもらい
ました。白くまアイスって指定されてるから、あたふたしてました(笑)。

ヘタな二人を応援したくなる映画

――完成した映画については、それぞれどうご覧になりましたか?

佐藤:僕は、この二人をずっと見て応援したい感じがしましたね。何よりもそう思えること
が重要だなと思って撮っていたので、客観的に見ても、そう思えたのは良かったなと思いま
したね。あと、個人的にジメジメした絵が好きなんです。カビが生えそうな感じの(笑)。
この映画は僕らしい湿度感のルックになったのも良かったと思っています。

いまおか:自分の映画よりも、頑張ってシナリオを書いた気がするんですよ。やっぱり人に
撮ってもらうので、力になりたいなという気持ちもありました。最後に綾子のセリフで、「
いいよ、忘れても。大丈夫、私が覚えてるから」ってセリフは書いているうちに思いついた
んだけど、このセリフを書くために、この映画があるんだと後で気が付いた感じでした。映
画で観ても、いいセリフだなと。自画自賛(笑)。

――記念すべき映画初出演となった街山さんはいかがでしたか。

街山:最初は自分の演技が下手だなって思ったんですけど、今回こんな素敵な作品に出会え
たこと、キングレコードさんをはじめとして、佐藤監督だったり、いまおかさんだったり、
いろんな人の気持ちや思いが入っている作品だなっていうのを完成した時に改めて思いまし
た。私も綾子に対して、「この人、本当にヘタくそだなぁ」って思ったり、私も祐太が本当
にいたら、当たっちゃうんだろうなと思うところがあったので、いろんな人に観てもらって
、「ここ分かる!」っていう気持ちになってもらえたら、嬉しいです。

そして映画と人生はつづく

――マヨナカキネマレーベルの次回作『甲州街道から愛を込めて』は、いまおか監督が撮る
そうですね。

いまおか:次もヘタな人たちの話(笑)。だけど、そういうのしかできないんだよね。普
通がよくわからないし、俺の普通はこれだし。普通の人たちの普通の悩みを描いたら、こう
いうふうになっちゃっただけのことなんだけどね。ずっと、めんどくさいなって言ってるか
らね。20代の頃から、ずっと言ってるんだけど、形は変われどなんだよ。形は変わるけど
、面倒くさいのはずっと面倒くさい。そういうのをちょっとずつ乗り越えて、今日まで生き
てきて。生きる道を探しているので。佐藤くんたちにくっついて行けば、引き上げてく
れると思う。ホラーも書いたことないけど、挑戦してみたい。

■公開情報
『ヘタな二人の恋の話』
7月1日(金)よりシネマート新宿にて公開ほか全国順次ロードショー
出演:街山みほ、鈴木志遠、伊藤和哉、大久保雛、小田飛鳥(友情出演)、古藤真彦、川瀬陽太、大下翔生、中嶌駿介、福田優生、北上愛莉、鈴木詩織
監督:佐藤 周
脚本:いまおかしんじ
エグゼクティブ・プロデューサー:山口幸彦(キングレコード)
企画:利倉亮
プロデューサー:江尻健司
撮影:小松嶺介
照明:目黒裕太郎
録音:山口勉
選曲・音響効果:藤本淳
助監督:森山茂雄
メイク:五十嵐千聖
衣装:手塚勇
街山みほ衣装:菅原 恵
スチール:千葉朋昭
協力:おかもと技粧、アップルボックス、アークビデオ i7 SOUP、アンギルズ
制作協力:レジェンド・ピクチャーズ
制作・配給:キングレコード
(c) 2022「ヘタな二人の恋の話」製作委員会
公式サイト:mayonaka-kinema.com
公式 Twitter:@EroticaQueen21

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