『ちむどんどん』上白石萌歌が体現した家族の“負” 明るく見えた比嘉家にあった深い悲しみ

『ちむどんどん』歌子が担った家族の“負”

 歌子は常に、何もできず手も足も出ない自分の不幸を嘆いてきた。でも、そうじゃない、どんなにこの世界が醜く見えても、一歩踏み出せば、意外な何かが見つかる。

 二ツ橋(高嶋政宏)が見た目の美しくないイカスミパスタを食べると美味しく、黒いイカスミには滋養があることを知ったように、眼の前の世界に目を凝らすと違う世界が広がっている。最初からそれを明言しないで、第10週まで脳天気な比嘉一家を描き続けたのは、彼らの抱える悲しみを印象づけたかったのではないだろうか。登場人物をもどかしく思う気持ちを味わうことで比嘉家の表に出さない気持ちを体感することができた。

 歌子と優子が泣きながら抱きあう姿を見て、同じく涙し、それをぬぐって目をきょろりと動かすとあえてけろりと「あ〜お腹すいた」と言う暢子の、弱音を決して吐かない強がりの表情が絶妙だった。

 その前に暢子は新聞社デスクの田良島(山中崇)からも、「世の中は不公平で理不尽なことがある」「がんばってもがんばってもどうにもならないのが人生。それでも明日はきっといい人生になると思うことが大事」と聞いていた。田良島、優子とふたり続けてメッセージ的なことを言わせているので重要なのは確かである。

※高嶋政伸の「高」はハシゴダカが正式表記。

■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK

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