河瀬直美監督『東京2020オリンピック』連作の興行面における二つの問題点

『東京2020オリンピック』興行の問題点

 二つめは、恐ろしいことに本作は二部作の一部で、『東京2020オリンピック SIDE:A』公開から3週間後の6月24日には、『東京2020オリンピック SIDE:B』の公開が控えていることだ。『東京2020オリンピック SIDE:A』からさらに観客の減少が予想される同作もまた、同じような規模で公開するつもりなのだろうか? 興行的にも6月24日といえば、夏休みシーズンを射程に、本来は強力な作品が公開され始める時期であるが、東宝配給作品では前後の公開作品にそのような作品も見当たらない。

 なお、『東京2020オリンピック SIDE:A』に関して、実際にガラガラの劇場で作品を観た観客から「危惧されたような国威発揚的な作品ではなかった」と内容を評価する声もあり、それがソーシャルメディアで拡散したりもしているが、過去の河瀬直美監督作品をよく知る人ならば、スポーツのスペクタクル性や躍動感とはほど遠い静的で社会派的な作品になることは容易に予想できたはずだ(JOCが違う作風を期待していたとしたら不見識すぎるが、JOCが不見識であることに驚く人もいないだろう)。政治的立場から作品を見ずに、ことさら(いずれにせよ作られることはIOCの規定で決まっている)作品の存在そのものをバッシングする態度同様、バズ狙いの逆張り的な作品への擁護も、現実として全国の劇場にダメージを与えている数字の前では寒々しく響くだけだ。

※河瀬直美の「瀬」は旧字体が正式表記。

■公開情報
『東京2020オリンピック SIDE:A/SIDE:B』
SIDE:A:全国公開中/SIDE:B:6月24日(金)全国公開
総監督:河瀬直美
制作・著作:International Olympic Committee
企画:東京2020組織委員会
制作:木下グループ
配給:東宝
(c)2022-International Olympic Committee- All Rights Reserved.

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