“コミュ障の義経”を演じた川栄李奈も流石の一言 『義経のスマホ』に感じたシリーズの成熟

シリーズの成熟を感じた『義経のスマホ』

『義経のスマホ』義経役の川栄李奈

 川栄演じる義経は「ジャストアイデアだったんですけどね」「エビデンスあるんですか」と小憎らしいせりふを吐き、大人を小馬鹿にしながら、戦で才能を発揮していく。みんなから「コミュ障」と指摘される、ちょっと陰キャな感じは子役ではなく、川栄だから表現できているのだろう。やがて、義経は頼朝に見捨てられるので、そのへんの繊細な感情は子役では難しいところを巧みにやっている。

 『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)で三代目ヒロインひなたとして活躍した川栄。時代劇を救う使命を帯びていたひなたこと川栄が時代劇に出た!と嬉しくなった。

 静御前のダンスのライブ映像に癒やされながら、なにかとぶつぶつ言いながら戦い続ける義経。NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』ではスルーされた壇ノ浦の戦いで有名な“那須与一の扇の的”も「勧進帳」のエピソードも描かれ、満足度は高い。

 平家を滅ぼしたものの、安徳天皇を入水させ三種の神器も回収できなかった義経は頼朝に追放される。シリーズおなじみの「武運春オンライン」では源家のスキャンダルが盛んに記事化されていく。小さなスマホのなかに人間の業がそっくり入っているのだ。

 運命に翻弄され憔悴する一方の義経に最後まで寄り添うのは弁慶だ。彼がじつにエモい。頼朝は義経を「殺したいほど好きだったんだよ」と解釈したり、勧進帳では義経の本質をずばっと指摘したりする。

 「陰キャを言い訳に人と向き合わない。そのくせ、誰よりも人の気持ちに繊細」そんな「おまえを見捨てなかった」のは「おまえのことが好きだからだ」「おまえの痛みがわかるからだ」と最大のピンチのなかで告白みたいなことをする弁慶。エモすぎる。

 ピンチをくぐり抜け、平泉に来た義経は弁慶と撮った写真を見ている。ひびの入ったスマホと思い出の写真。これには『土方のスマホ』を思い出した。

 スマホシリーズ第3弾は、スマホのあらゆるアプリを生かした『光秀のスマホ』の仕掛けのわくわく感と、スマホを青春のアルバムにして叙情性を持たせた『土方のスマホ』、過去2作のいいとこ取りになっている。3作目にきて、『○○のスマホ』シリーズが成熟したように感じる。

 歴史的人物はたくさんいてエピソードにも困らない。『○○のスマホ』シリーズがご長寿シリーズになるかどうかはこれからにかかっている。

 ちなみに、ちょうど、最近、NHKのニュース番組で縦画面が人気であると紹介していた。スマホが縦なので縦位置の写真や映像が増えているのだ。ただ、横位置のテレビで縦映像にすると左右の端が空いてしまう問題がある。その点『○○のスマホ』だと、横位置の従来の画角の中央にスマホの縦画面が配置され、縦と横の画を同時に見ることができる。これもまた冴えた発明といえるだろう。次は家康? シリーズレギュラーの山田孝之が『どうする家康』に出演が決定しているため、その役での登場もありかも?と妄想が膨らむ。『半蔵のスマホ』、かなりありではないだろうか。このために『○○のスマホ』シリーズはあったのではないか。

■放送情報
『義経のスマホ』全話一挙再放送
NHK総合にて、6月11日(土)00:25〜01:05(10日深夜)放送
(c)NHK

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