“コミュ障の義経”を演じた川栄李奈も流石の一言 『義経のスマホ』に感じたシリーズの成熟

シリーズの成熟を感じた『義経のスマホ』

 NHKがおくる、『光秀のスマホ』、『土方のスマホ』に続く「時代劇✕スマホシリーズ」の第3弾は、待ってましたの『義経のスマホ』であった。

 明智光秀、土方歳三……とそのとき放送している大河ドラマに関連する歴史的人気者を主人公にして、「もしも昔の時代にスマホがあったら?」という空想エンタメは、スマホあるあるを交えながら、みんな大好き、歴史の人気エピソードをしっかり押さえているので、歴史好きも楽しめるし、ひねったドラマ好きやお笑い好きも楽しめる。

 たとえ、歴史を知らなくても、スマホのルールを知っていれば、世界に入りやすく、いつの間にか物語に没入できる。“スマホ”という装置を使うことで過去と現在を接続するすばらしい発明ドラマが『○○のスマホ』である。

 ただしこのスタイルを長編ドラマでやるのは難しいだろう。おそらくチープになると思う。だが『○○のスマホ』は1回につき5分なので、むしろ手軽さが良い。テレビドラマにYou Tube感覚をうまいこと持ち込んだといえるだろう。近年、時代に沿った番組づくりを模索しているNHKの成功例。これなら早送りする間もない。

 さて、義経。第1回、冒頭は「牛若丸のキッズケータイ」。牛若丸(義経の幼名)は天涯孤独で自分が何者なのかわからないでいる。キッズケータイではなくネットのできるスマホがほしくて、他人のスマホを奪う危険性もはらんでいる。

 奥州平泉に出向くことになるのはスマホ欲しさから。やがて、生き別れだった兄・頼朝(塚本高史)と感動の再会を果たす。だが、その感動は弁慶(小澤征悦)の助言による過剰な演出だった(第2回)。

 弁慶はスマホのFUMI(○○のスマホシリーズにおけるLINE)で何かと義経に指示を出す。出会った時、刀狩りではなくスマホ狩りをしているところがツボる(しかもその相手が)。

 義経は、第1回で、西行(山田孝之)の「わらべでんわそうだんしつ」に人生相談していたが、スマホをゲットしてからはポケモンのパロディゲームに興じたり、ネットの「天狗ゲタ子の武士相談室」を利用したりしている(第3回)。

 頼朝と合流したものの、貴族的なコミュニティに馴染めない野生児・義経はFUMI のグループ機能による「サロン源〜MINAMOTO」のメンバーたちが頼朝を持ち上げ「アグリー」「アグリー」とスタンプを押すことに慣れない。このFUMIスタンプ「アグリー」が受ける。「光秀」「土方」の戦国時代編にはなかった「アグリー」スタンプの登場によって、シリーズ第3弾として中だるみしそうなところをみごとに回避した。「アグリー」たったひとつで新鮮になるからすごい。『○○のスマホ』シリーズはFUMIスタンプのセンスがいつもいい。

 第4回では、義経がついに「鵯越えの逆落とし」を行って検非違使に出世。そこでやっと義経が川栄李奈であることがわかる。

 主人公が途中まで誰かわからないで進むのはシリーズのパターンだったが、「義経」では第1回の牛若丸時代は『青天を衝け』(NHK総合)で栄一の子役・小林優仁が演じていた。義経になってからも小林がやっているのかと思っていたら、第4回で川栄李奈であることがわかる。

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