『光秀のスマホ』から進化した『土方のスマホ』 新選組の本質をスマホで表現するセンス

『光秀のスマホ』から進化『土方のスマホ』

 『光秀のスマホ』(NHK総合)から1年、『土方のスマホ』(NHK総合)がはじまりファンを喜ばせたが、5分×6回シリーズなのであっという間に駆け抜けてもう最終回。名残惜しい気持ちである。『◯◯のスマホ』シリーズと呼んでよさそうなこの企画は「もしも歴史上の人物がスマホを持っていたら?」というナンセンスコメディタッチの5分×6本の番組である。

 『光秀のスマホ』は本能寺の変で功績をあげた光秀(山田孝之)が凱旋の帰途、何者かに襲われるシーンで終わった。続く新選組・土方歳三(窪田正孝)を主人公にした『土方のスマホ』は慶応4年4月、新選組隊長・近藤勇(山田孝之)が処刑されたニュースを土方がスマホで見て「近(こん)ちゃん……」と呻くシーンからはじまる。山田孝之演じる役の死で終わり山田孝之演じる役の死からはじまるというリンク感、それがどこかシリアス感を帯びてはいるものの、あくまでコメディである。

 新選組・土方歳三が一旗揚げようと京都にやって来て、仲間の近藤勇を隊長、自身が副隊長になって新選組を率いて大暴れする様子をスマホでのやりとりで見せる。近藤や沖田総司(声・荒牧慶彦)、地元の姉(馬場園梓)や土方ファンの上七軒・君菊(声・佐倉綾音)とのやりとりはスマホを通話機能や「FUMI 」という名のメッセンジャーアプリ、刻一刻と変わる幕末の殺伐とした様々な状況は「武運春オンライン」「ぶしらぼ」などのネットニュースで逐一チェック、自身の情報発信はTwitter的な「士witter」やInstagram的な「BUSHISTAGRAM」などで行う。

 京都に出てきて武士活動をはじめた途端、BUSHISTAGRAMから君菊がメッセージを送って来ていい感じに。武士ってモテると調子に乗る『スマホ』の土方像は、大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合)の土方(町田啓太)の記憶がまだ鮮烈な身からするとものすごく軽い。「攘夷」の意味もわかっていない。もちろんそういう趣旨で作られているのだからそれでいい。いやそれがいい。窪田正孝が地方から出てきたややヤンキーのような土方を能天気に演じている。

 サブタイトルは第1話「武士だぜ!今日から俺は‼」、第2話「君の名は?新選組だ!」、第3話「待たせたな!お待たせしすぎたかもしれません!」、第4話「粛清、始めました」とパロディ調。第3話の「待たせたな」は三谷幸喜脚本の大河ドラマ『新選組!』で山本耕史演じる土方歳三の口癖だったものである。一方、山本土方が近藤を呼ぶ「かっちゃん」はここでは使用せず「こんちゃん」で差別化している。また『新選組!』の山南敬介を演じた俳優が堺雅人であるからこその山南のセリフ「倍返しです」もある。使うものと使わないものを選りすぐって何から何までツボを抑えまくったパロディセンス。

 脚本は『光秀のスマホ』も手掛けた竹村武司、スマホ文案は同じく『光秀~』も手掛けたスエヒロ、ジブが続投している。光秀がいた戦国時代と新選組が活躍する幕末では1582年(本能寺の変)から1868年(慶応4年)と300年ほど年が違うにもかかわらずスマホのシステムが進化していないことはそういうものではあるとしよう。公式では「幕末SF 時代劇」になっているからなんでもありだ。スタンプデザインが300年間愛用されているなんて素敵と前向きに捉えることは可能である。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる