『シニアイヤー』にみる、ティーン映画の原点 90年代の高校生が愛した学園映画の数々

『シニアイヤー』にみる、ティーン映画の原点

 年代は少し昔に戻るが、ティーン映画の原点とも言える『グリース』のポスターも飾られていた。夏休みに出会ったダニー(ジョン・トラボルタ)とサンディ(オリビア・ニュートン=ジョン)の恋物語で、夏が終わりサンディが故郷であるオーストラリアに帰ってしまうところからストーリーは始まる。しばらくして、ダニーの高校へサンディが転校してくるが、不良グループに属しているダニーは本来の自分の姿を知られてしまい、二人の恋は夏の甘い思い出のように上手くはいかない。ステファニーは元々オーストラリア出身であり、かつ『グリース』に出てくるピンク・レディースという人気グループに弄ばれているサンディを、自分を重ね合わせているように感じた。

 このように、かつてティーンを熱狂させた映画に出てくるような、プロムや憧れの存在との恋愛、友人との喧嘩など典型的なシーンも『シニアイヤー』には登場する。しかしこれほど人気があるのは、そういった定番要素に一捻り加えているからだろう。例えば、20年間昏睡状態だったことから、20年間で起きた生活の変化に敏感になっていることだ。自分の容姿が変わっていることはもちろん、スマートフォンに戸惑ったり、20年前には普通に使われていた言葉も今では差別用語になっていることに気付いたりするのだった。また、今までは校内で人気があるのは「チアリーダー」だったのに対して、現代ではSNSでフォロワー数が多い「インフルエンサー」が一目置かれる存在になっていた。平等を実現するために、プロムでのクイーンやキングの選出は禁止され、チアリーダーも特定のチームを応援するのではなく環境問題を叫ぶ。今では普通に受け入れられていることが、大きな変化として映されており、現代を生きる私たち視聴者も、気付かされることが多くある。

 コメディ色も強く、冒頭から最後のNGシーンまで、至る所で思わず笑ってしまうはレベル・ウィルソンのキャラクターも色濃く影響しているだろう。最後に、大学に行きたいと言っている姿からも、ポジティブに前に進むことを考えていて元気をもらえる。五月病で気持ちがなかなか上がり辛い季節、『シニアイヤー』を観てみるのも手ではないだろうか。

■配信情報
Netflixシリーズ『シニアイヤー』
Netflixにて独占配信中
(c)Boris Martin/Netflix

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる