ライアン・レイノルズの魅力が凝縮された『アダム&アダム』 バディものの新たな代表作に

肩肘張らずに観られる『アダム&アダム』

 『フリー・ガイ』が記憶に新しいライアン・レイノルズとショーン・レヴィ監督が再びタッグを組んだ『アダム&アダム』がNetflixで配信中だ。この2人のタッグと聞くとコメディであることを想像する映画ファンも多いと思うが、本作はSF映画で、いわゆるタイムトラベルものである。そして最後にはホロッと泣ける家族の物語でもあるのだ。また本作には、主要キャラクターの3人にMCU俳優が起用されている。

 『アダム&アダム』は、2050年の未来から2022年へ不時着してしまったアダム(ライアン・レイノルズ)が12歳の自分(ウォーカー・スコーベル)と世界を救うために奔走する物語である。

 
 本作で主人公のアダムを演じたのは、『デッドプール』のライアン・レイノルズ。アダムの父親役として『アベンジャーズ』シリーズのブルース・バナー/ハルクのマーク・ラファロのほか、妻ローラ役には『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』シリーズのガモーラでお馴染みのゾーイ・サルダナが名を連ね、MCUファンにとっては嬉しいキャスティングだ。

 またアダムとローラのアクションシーンでは、決まりきらないアダムと容赦なく敵を倒していくローラの姿は、まるで『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』のスター・ロードとガモーラのようでもある。さらにマーク・ラファロが演じた父親は物理学教授であり、『アベンジャーズ』のブルース・バナーと似ている役柄には思わずニンマリしてしまう。それだけではなく、『スター・ウォーズ』シリーズのライトセーバーを思わせるような武器やダース・ベイダーのような敵まで登場するなど、MCUやSF映画ファンにとってニヤリとできる小ネタが散りばめられている。

 大人アダムと子供アダムの掛け合いも本作の楽しいところである。大人アダムがなんでも言いくるめるのかと思いきや、そんなことはない。12歳のアダムはいじめられっ子ではあるが、生意気で口も達者。子供らしい一面もありながら、察しが良く賢い。大人アダムをいとも簡単に言い負かすことだってできるし、「大人でも僕よりわかっていない」と諭す場面だってあるのだ。憎まれ口を叩き、叩かれる2人の姿を見ていると思わず笑みがこぼれる。

 2人のアダムは言い合いになることもあるが、お互いに翻弄されたり、ときには助け合ったりしながら絆を深めていく。それ故、本作にはバディ映画としての魅力もある。多くのバディ作品では、上司と部下や同僚、夫と妻など、互いの足りないところを補い合うキャラクターが登場してきた。本作もその点は共通しているのだが、他の誰でもない自分自身とタッグを組む設定は珍しいポイントだ。

 大人アダムが子供アダムに言い負かされているのも面白い。未来からきた大人アダムは、もちろん子供アダムの未来を知っているし、知識や経験も多いはず。それでも子供アダムに諭されたり、意表を突かれたりする。大人になるまでの長い過程で、過去の記憶に歪みが生じ、上書きされた歪んだ記憶のまま自分の気持ちまで歪んでしまったことを、幼い自分を通して気づくことになる。2人のアダムは、自分というバディを通して、己と向き合うことにもなるのだ。

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