星野源、役者としての印象に変化? 『17才の帝国』の冷静な演技で見せた新たな説得力

星野源『17才の帝国』で見せた新たな説得力

 そんな星野が新たな俳優像を築いたのが、2020年のドラマ『MIU404』(TBS系)。主演の綾野剛とは以前にドラマ『コウノドリ』(TBS系)で共演していた。綾野演じる人情派の鴻鳥サクラと、星野演じる理論派の四宮春樹は正反対のキャラだったが、『MIU404』も二人が熱血漢と冷血漢という対照的なキャラを演じるバディ刑事ドラマであった。星野演じる志摩一未は今回も感情は抑え気味で、常に冷静な判断をするタイプの刑事。『逃げ恥』とは違い、そこに可愛さはない。銃を突きつけられても怯まず死を恐れない感情のなさで、心の奥底に抱えている計り知れない闇を想像させる。だからといって軽快なやり取りもあり、色々と勘ぐりたくなる星野らしいキャラクターだった。同年公開の映画『罪の声』でも、感情を抑えた演技で心の闇を自然に見せているところに、大人になった星野自身のキャラクターがアップデートされた。

 現在出演している『17歳の帝国』は、17才の高校生・真木亜蘭(神尾楓珠)がAIにより実験都市プロジェクト「UA(ウーア)」に総理大臣に任命され、理想都市・国家の実現を目指す青春SFドラマ。星野は現・鷲田内閣の官房副長官を務める政治家・平清志を演じる。本来なら次期総理に一番近い男で、鷲田総理(柄本明)に「プロジェクトを成功させれば次の総理になる」と推され、今は真木のサポート役に徹している。純粋に真木に未来を見ているのかも知れないが、どちらかといえば、影のフィクサーとして真木を利用し、かつて思い描いた理想の政府を作ろうとしているような気もする。

 いわゆる政府の中での中間管理職的な位置で、上に見せる良い顔が、従順ともその椅子を狙っているともとれる冷静沈着さ。最小限のアドバイスだけで自由にやらせ、それを見守る眼差しの中にあるのは、応援なのか。それとも彼らの行動を“若気の至り”と思っているのか、敵か味方か真意が分からないところが物語の面白さの一つであり、野心的な政治家によくある狸ぶりが絶妙に星野のイメージに合っている。それがハマるのも、ネクストホープの政治家を演じられる年齢になったからだ。17歳が猪突猛進で政治を進めていく姿を見て、そのまぶしさに自分の過去を重ね合わせるかのように、思わずほくそ笑む表情を見せる。そういった星野が得意とするいつもの感情をあまり見せない冷静な演技は、40歳を超えた年齢になったからこそ新たな説得力を持っているのではないだろうか。

■放送情報
『17才の帝国』
NHK総合にて、毎週土曜22:00〜放送(全5回)
出演:神尾楓珠、山田杏奈、河合優実、望月歩、染谷将太、星野源ほか
作:吉田玲子
制作統括:訓覇圭
プロデューサー:佐野亜裕美
演出:西村武五郎、桑野智宏
写真提供=NHK

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