『ちむどんどん』で相次ぐ“父の死” あっさりと描かれる中で物語にどう機能していく?

『ちむどんどん』で相次ぐ“父の死” 

 現在放送中のNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』。なんと第38話では、久々に暢子(黒島結菜)が和彦(宮沢氷魚)と再会するも、同時に悲しいニュースを聞くことになってしまった。暢子たちが子供の頃、沖縄に和彦を連れて滞在していた彼の父・史彦(戸次重幸)が亡くなっていたのである。どうやら、東京に帰ってからしばらくして、病気になってしまったらしい。暢子と和彦が再会する10年間の間に、何があったのだろうか。

 史彦の死にインパクトがあるのは、彼が暢子にとって恩人のような存在だったからだ。彼が自分と息子をもてなしてくれた比嘉家の全員を連れて、お礼にレストランへ連れて行った時のこと。この時、暢子は初めてイタリア料理を口にし、その味に感嘆した。この時のレストランで書いたメモが、のちに行われた産業まつりの「ヤング大会」にて生み出した起死回生の「ナポリタン」へと繋がっている。そして、大会で優勝したことをきっかけに「東京でイタリアンの料理人になりたい」と暢子は宣言した。つまり、今の彼女がある全てのきっかけを史彦が与えたと言っても過言ではない、それくらい物語においては重要な人物なのだ。しかし、そんな彼が劇中になんらかの描写があるわけでもない、いわゆる“セリフ死”を遂げてしまった。

 『ちむどんどん』で描かれる“父親の死”というのはこれが二度目。第6話で急逝した比嘉賢三(大森南朋)以来の出来事だ。さとうきび畑で突然胸を押さえ、苦しそうに倒れてしまった彼は心臓発作が原因でこの世を去ってしまう。しかし、その場で亡くなってしまったのではなく家に帰り、しばらく意識を持ったまま横になっていたことで四兄妹らとの別れも描くことができた。それでも、突然の、あっさりとした死である。

 ただ、振り返ってみると最近の朝ドラの描く「父の死」はあっさりとしたものが多いのだ。前作『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)では安子(上白石萌音)の父、金太(甲本雅裕)が亡くなるまでの瞬間がしっかり、美しく、素晴らしい演出で丁寧に描かれていたもののナレーションでその死が告げられるという、“ナレ死”だった。2020年の『エール』(NHK総合)でも、第9話というまだ“子供時代”に、ヒロイン音(清水香帆/二階堂ふみ)の父・安隆(光石研)が交通事故に巻き込まれて死亡したことが子供たちに告げられた。2016年の『とと姉ちゃん』(NHK総合)に関しては、主人公・小橋常子(内田未来/高畑充希)が早くに亡くなった父の代わりになっていくというタイトルに沿って、第3話で体調を崩した父・竹蔵(西島秀俊)が第5話で亡くなっている。それに2015年の『あさが来た』(NHK総合)では、ヒロインのあさ(波瑠)の父・今井忠興(升毅)が病死するも、その死は描かれず、のちに父の遺品が届けられたことであさが知ることになった。

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