『パリピ孔明』のラップバトルはすごかった “本物”だった置鮎龍太郎、千葉翔也、木村昴

『パリピ孔明』のラップ場面がすごい

 2015年から2020年にかけて放送された『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日系)の影響なのか、フリースタイルラップに寛容な雰囲気が世に醸成されたように感じる。実際、現実世界だけでなく、アニメの世界でも登場人物がフリースタイルラップを披露するシーンも珍しくない。今回はバイブスがブチ上がったアニメ『パリピ孔明』、『ゾンビランドサガ』でのフリースタイルラップを振り返りたい。

 『パリピ孔明』のフリースタイルラップは圧巻だった。第5話では、MCバトル選手権DRM3年連続優勝を果たすも、周囲からの期待やヘイトに押しつぶされ、ラップとは距離を置く生活を送る天才ラッパー・KABE太人(CV:千葉翔也)が登場。

 そんなKABE太人に不満を持つカリスマラッパー・赤兎馬カンフー(CV:木村昴)は、街中でKABE太人を見つけるなり、フリースタイルラップを仕掛ける。

 「抜いてねえ剣は錆びついて使えなくなんだよ」「お前の武器であるライムやリリックが見えねえよ、そこどん底」とディスを連打。赤兎馬カンフーはラッパーとしての実力は折り紙つきの木村昴がCVを担当しているだけあって、聞きやすいだけでなく、感情を揺さぶる見事なラップだった。

 ちなみに、このシーンでは「いつまで自分に足枷はめてんだKABE」というディスがあるが、原作では「いつまで自分の心の中に穴ほってんだKABE」となっている。ここだけでなく、原作とはちょくちょく言葉を変えている箇所は少なくない。実際にラップする際に言いやすさを重視し、ラップの文言を細かく変えている可能性もありそうだ。良い意味で“原作通り”に反したアニメ化と言えるだろう。

 第6話では孔明(CV:置鮎龍太郎)とフリースタイルラップをすることになるKABE太人。最初は渋々だったKABE太人も、ビートがかかればスイッチが入る。ここでも先述した通り、原作とは微妙にワードを変えており、とても耳に入りやすく、そのうえで「オレのライムにショック受けて右往左往」「してんのが目に浮かぶ諸葛亮」「孔明やめて就職活動」「でもしとけよ究極の弱小」と“諸葛亮”というワードで韻を踏み続け、客の心を掴む。

 自分の名前でディスの韻を踏まれまくった孔明ではあるが、さすが幾戦の修羅場を潜り抜けてきただけあって動揺する様子は一切なし。「蜀漢に帰らせたいならタイムマシーンをご準備くださいKABE太人」と落ち着いたトーンで交わし、「あな たは こころ ざしの重みをわかっていない」「じん せいを かける 気概がまず備わっていない」と応戦。第5話では「ラップじゃなくてお経だな」とKABE太人から評された孔明のラップではあったが、第6話ではリズムに緩急をつけて、その進化を魅せる。

 巧みなワードセンスとフロウの引き出しの多さを駆使するKABE太人に、基本的には抑揚をつけずに淡々と粘着質なディスを重ねる孔明。それぞれ個性が異なるラッパー同士の掛け合いになっているため、一本調子にならず、このフリースタイルラップ自体が一つの楽曲として楽しめるものになっていた。

 ちなみに、このフリースタイルラップの結果は、序盤からのディスの応酬とは打って変わり、終盤以降は過去の自分と向かい合い、「あんたに感謝 日々中途半端 ここで気付けなきゃ一生暗夜」「みんなに感謝 響けこの賛歌 やっと出てきたよ俺なりのアンサー」と孔明や周囲の人々たちへ感謝を伝える、ライムやフロウのスキルを超えたエモーショナルなラップを披露したKABE太人の勝利に終わった。

 自分の心の声を嘘偽りなく聞かせてくれるのがラップの魅力であり、KABE太人のラップはまさに本人から出た言葉のように感じられた。“セリフ”ではなく確実にフリースタイルラップであり、胸が熱くなるものがあった。



関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アニメシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる