志尊淳と荒木哲郎監督が語り合う、理想の仕事観 「“楽しい”の先にクリエイティブがある」
志尊「この作品に携われて最高だった」
――志尊さんは『2分の1の魔法』のインタビュー時に、自分の声にコンプレックスがあったと言っていました。しかし、本作を観ていると、すごくいい声をされているとしか思えないのですが、どの辺りにコンプレックスがあったのでしょうか。
志尊:実は、幼少期にポリープがあってハスキーな声だったんです。よく「八百屋」っていじられるくらいかすれた声だったので、自分の声にコンプレックスを持つようになりました。声変わりの頃にそれもなくなったんですけど、自分の声は普段聞く時と、録音や映像などで客観的に聞く時と聞こえ方が違うじゃないですか。なかなか客観的には好きになれないんですよね。
荒木:いい声ですよ。自分は大好きです。志尊さんはいつも論理的に話すし、監督業もやっているだけあるなと思いました。こんなにしっかり自分の考えを話せる人は、声優さんも含めて初めてお会いしました。
志尊:それもある種のコンプレックスで、役者は考えるなと言う人もいますが、考えないで能動的に芝居できる人が羨ましいです。僕は、考え抜いて自分の気持ちを作っていくことしかできないので。
――志尊さんは2021年、急性心筋炎で入院されたり新型コロナの感染があったりと大変な年だったと思います。これらの経験はご自身にとってどういうものでしたか?
志尊:去年の経験というよりは、このコロナ禍で人生観も仕事観も大きく変わりました。以前は仕事第一で、どうすれば売れるだろうとばかり考えていましたが、それが一切なくなったんです。“楽しい”の先にクリエイティブがある、そういう生き方をしている人たち、例えば荒木監督がそういう人だと思いますが、そういう人たちを羨ましいと思っていたのに一歩踏み出す勇気がありませんでした。でもコロナ禍でこの先どうなるかわからない世の中になったら、すっとそういう生き方にシフトできたんです。この先の人生、何か具体的にビジョンがあるかと言われると、実は全然ないんです。もちろん仕事はポリシーを持ってやらせていただきたいと思いますし、本当に自分が楽しめることをやっていきたい、今は純粋にそうやって考えられるようになりました。
――荒木監督はご自身の生き方を楽しんでいますか?
荒木:そうですね。実務の上ではいつも悩んで苦しんでいますが、実際にはやりたいと思った仕事にだけエントリーさせてもらっています。自分が実現したい、本当にやりたいと思う企画に携わって、実務上は苦しみだらけ、それでいいと思っています。
志尊:僕にはすごく楽しそうに見えます。誰よりもこの作品が好きなのは監督なんだなと感じます。そういうのがすごく羨ましいんです。
荒木:ええ、楽しいし大好きです。オリジナル作品を続けてやらせてもらえているのはありがたいことですし。
――最後に、これから本作を観るファンに向けてメッセージをお願いします。
志尊:観終わった瞬間に、この作品に携われて最高だったという気持ちになりました。この作品のエンドクレジットの最初に名前が出てくるのは財産だと本心から言えるし、これから観てくださる方にもその気持ちが伝わればいいなと思っています。
荒木:志尊さんが今言ってくれた言葉はすごく嬉しいです。この手の質問は取材を受け続けていると定型文ができてくるんですけど、これに定型文で返すわけにはいかないですね(笑)。V編(ビデオ編集)で観た時が一番お客さんの体験に近いと思うのですが、エンディングが流れてきた時にすごくこみ上げてくるものがありました。自分で作ったものなのに、切ないような優しいような愛しい気持ちになったんです。いつか自分がそんな気持ちになれるフィルムを作りたいと思っていたので、それが今回叶ったのかもしれないと思うと本当に嬉しかったです。
■公開・配信情報
『バブル』
Netflixにて配信中
全国劇場公開中
監督:荒木哲郎
脚本:虚淵玄(ニトロプラス)
キャラクターデザイン原案:小畑健
声の出演:志尊淳、りりあ。、宮野真守、梶裕貴、畠中祐、広瀬アリス、千本木彩花、井上麻里奈、三木眞一郎、広瀬アリス
オープニングテーマ:「Bubble feat. Uta」Eve(TOY'S FACTORY)
エンディングテーマ:「じゃあね、またね。」りりあ。(VIA / TOY'S FACTORY)
制作:WIT STUDIO
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2022「バブル」製作委員会
公式サイト:bubble-movie.jp
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