『マイファミリー』香菜子役でも体現 高橋メアリージュン演じるキャリアウーマンの説得力

高橋メアリージュン演じるキャリアウーマン像

 2021年の『アバランチ』(カンテレ・フジテレビ系)で演じた元自衛隊・特殊工作部隊のリナ役は、相手が何人いようと負けない威圧感で、全く欠点が見えないクールな戦闘員。しかし親友を死に追いやった政治家に、涙を流しながら何度も殴りつてけいく姿が印象的だった。普段、冷静沈着で戦闘マシーンのようなリナだからこそ、怒りと悲哀が痛いほど伝わる人間味を見せたことで、深みのある役柄に昇華できたのだ。『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系)では、とわ子が社長を勤める会社の営業部責任者・松林役として出演。常に社長を支えてきたデキる社員だが、途中でとわ子への裏切りを画策する。ただそれは、会社を守るために、社長とは違う考えで動いたものだった。それでも裏切った自分に優しい言葉をかけるとわ子に対して、気を張っていた松林が涙を見せ、苦しい胸の内が全てを物語る。高橋がそれまでひらすら松林をクールに演じてこなければ、そういった弱みも含め、ここまで魅力的な役にはならなかっただろう。

 高橋はエキゾチックでクールな存在感を放つというだけでも、様々なバリキャリ役を与えられたと思う。しかし、完璧だったキャラクターが人間味を見せたり、虚勢を張った役柄が弱みを見せると一気に心を掴まされたりする。そして、そこに高橋の覚悟を感じる確かな演技力があるからこそ、説得力が生まれるのだ。またそうした役は、主役を表でサポートしつつ、「実はこういう思いで行動していた」という、物語の転機となる重要なポジションにもなりやすい。その多くは「愛ゆえの行動」であるからこそ、高橋の演じるキャリアウーマンに魅力がある理由だろう。

 現在放送中の『マイファミリー』は、二宮と多部未華子演じる夫婦が、誘拐された娘を取り返すために奮闘する姿を通して、“家族の絆”を描く物語。高橋が演じるのは、二宮演じる温人のビジネスパートナー・香菜子。温人とともに立ち上げた「ハルカナ・オンライン・ゲームズ」最高執行責任者で、温人と強い絆で結ばれている存在だ。会社が危機に直面しても責任を押し付ける温人に対して、不満をぶつけながらも何とか会社を立て直そうと必死に動き回る。

 温人の妻は2人のことを疑っているが、実際に、温人の仕事上の妻のごとく、“会社という家族を守ることが温人への愛”だと考えて行動している。そこに愛があるからこそ、しっかりと叱る嫌われ役も担う、これまで高橋が得意としてきたバリキャリ役そのものだ。一瞬乗っ取りのような行動を起こしているが、家族の絆を描くこのドラマで、家族の絆が深まるほど、温人と香菜子の関係は疎遠になっていく。この仕事上の愛がいつ壊れるのか、否か。真犯人の可能性もまだ十分にあるのではないだろうか。

■放送情報
日曜劇場『マイファミリー』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:二宮和也、多部未華子、賀来賢人、高橋メアリージュン、大友康平、神野三鈴、迫田孝也、那須雄登(美 少年/ジャニーズJr.)、山田キヌヲ、 渡辺邦斗、藤間爽子、大島美優、凛美、山崎莉里那、松本幸四郎、富澤たけし(サンドウィッチマン)、蓮佛美沙子、森脇英理子、珠城りょう、濱田岳、玉木宏
脚本:黒岩勉
演出:平野俊一
プロデューサー:飯田和孝、渡辺良介(大映テレビ)
スーパーバイジングプロデューサー:那須田淳
協力プロデューサー:大形美佑葵
音楽:大間々昂
主題歌:Uru「それを愛と呼ぶなら」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
製作著作:TBS
(c)TBS

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