“不老不死の夢”は叶う? ディーン・フジオカ主演『パンドラの果実』が迫る科学の希望と闇
「どうすれば不老不死は叶うのか、どうすれば人類は死を乗り越えられるのか」
「けれど、不老不死が人類の幸せとは限らない」
最新科学が引き起こす事件を解き明かし、観る者に科学の希望と闇を訴えかける『パンドラの果実〜科学犯罪捜査ファイル』(日本テレビ系)。第2話では、脳をデータ化し永遠に生き続けたいとする「不老不死の夢」が描かれた。
「魂が抜けたような」突然死を遂げたプロeスポーツ選手・田中。遺体の脳からは、発火したマイクロチップが見つかった。事件解明につながるカギを得るべく、小比類巻(ディーン・フジオカ)らがまず辿り着いたのは、カール・カーン(安藤政信)という男。人間の意識をデータ化し、肉体からコンピューター上に転送する「精神転送」の研究者である彼は「肉体は滅んでも、永久に生き続けることはできる。不老不死は夢ではない」と講演で語り、聴衆を引き付ける。
「うさんくせえ話。インチキ」だという長谷部(ユースケ・サンタマリア)、「不老不死は全人類の夢」だという小比類巻、その言葉に「叶ったら、人間は進化することをやめてしまう」と答える最上(岸井ゆきの)。彼らは三者三様の反応を示す。
作中ではたびたび、ある事象に対する三者のリアクションやディスカッションが描かれる。そうした場面において、おそらく長谷部の声はもっとも視聴者の立場に近いのではないだろうか。科学の知見を持たないことに加え、素直で人間的、標準的な考え方の持ち主だ。「どういうこと?」「おかしいのではないか?」と疑問を呈し、感情的になれる長谷部。本作を異世界の出来事だと感じないのは、視聴者同様に突如、最新科学に放り込まれた、彼の存在によるところも大きい。
捜査線上に浮かび上がったのは、鮎川(今野浩喜)という脳神経外科医。小比類巻らは、彼が研究していたという脳内チップのデータを入手する。そのころ、田中のチームメイトである三ツ矢(吉田健悟)と坂東(松田陸)は鮎川のもとを訪ねていた。脳へのチップ埋め込みは、eスポーツ界ではドーピングに値する。施術を行ったのはまさしく鮎川で、2人は「チップを外してほしい」と依頼しに来たのだ。
彼らから少し遅れて、小比類巻らも鮎川のクリニックを訪ねるが、話もそこそこに待合室での待機を命じられる。鮎川は自室に火を放ち、三ツ矢、坂東ともども姿を消した。
トゥーランドットより「誰も寝てはならぬ」をBGMに、恍惚とした表情を浮かべ、簀巻にした三ツ矢・坂東を乗せたオープンカーを走らせる鮎川。美しい音楽と映像が、彼の狂気と「タガが外れた」解放感を演出していた。