“不老不死の夢”は叶う? ディーン・フジオカ主演『パンドラの果実』が迫る科学の希望と闇

『パンドラの果実』が迫る科学の希望と闇

 そのころ、最上は再びカーンに接触。過電流の共振運動によるチップの発火と、鮎川の実験との関連について話を聞く。「精神転送の際には、脳に負荷がかかり脳死状態となる」と、カーンの秘書がこともなげに言う。そしてカーンは「この世界では、それを死と呼ぶ」と続けた。

 小比類巻と長谷部が鮎川の居場所を突き止めたとき、三ツ矢はすでに実験がなされたあとだった。鮎川の本来の目的は、精神転送の実験。能力向上をエサに、3人にチップを埋め込んだのだ。彼らは死なない、永遠の命を手に入れるのだと鮎川は言い、小比類巻らに問う。人類の意識をコンピューター上に移すことができたら、誰も苦しまず、悲しまず……それが真のユートピアではないのかと。そうして、自らにも精神転送を施した。

 観る者にとって、それはたしかな死であり、苦しみでしかない死であった。夢の装置は火花を散らし、痛々しい死には赤い血が流れる。それでも、彼が心から幸福を信じて「遠くへ」行ったのであれば、あるいはーー。けれど「この世界」では当然、鮎川は「死亡」と報道される。

 鮎川の脳内転送は失敗とされたが、「ネット空間のどこかにいるのでは」と食い下がり、最上にも見解を問う小比類巻。けれど彼は、鮎川を止めようとした。精神転送を施すことはすなわち、「死」だと思ったからではないだろうか。一方で、鮎川が死や痛みのないユートピアを語ると、ためらいが生まれた。科学の進歩への希望と、すでに知ってしまった喪失のあいだで、小比類巻は今も揺らいでいるように見えた。

 初回、第2話で描かれたのは、「永遠に生き続けたい」と願う人間の思い。ロボットになっても、データになっても、意思が永遠に生き続けるならば不死と呼べるのかもしれないと思った。次回描かれるのは、すでに死を迎えた人間。まるで生き返ったかのように動き出し、行方不明となった遺体の謎に迫る。もしもよみがえりがあるならばーーそれもまた、見ない夢ではない。現に小比類巻も、来たるその日を待つ一人なのだから。

■放送・配信情報
日本テレビ×Hulu共同製作 新土曜ドラマ『パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~』
Season1:日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜放送
Season2:Huluにて、6月配信
出演:ディーン・フジオカ、岸井ゆきの、佐藤隆太、西村和彦、本仮屋ユイカ、シャラ ラジマ、安藤政信、板尾創路、石野真子、ユースケ・サンタマリア
原作:中村啓『SCIS 科学犯罪捜査班 天才科学者・最上友紀子の挑戦』(光文社文庫)
脚本:福田哲平、関久代、土城温美
監督:羽住英一郎
主題歌:DEAN FUJIOKA「Apple」(A-Sketch)
チーフプロデューサー:三上絵里子、茶ノ前香
プロデューサー:能勢荘志、尾上貴洋、古屋厚、中村好佑
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/pandora/
公式Twitter:@pandorano_ntv
公式Instagram:@pandora_ntv

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