『明日』が描くパワハラ・セクハラへの苦悩 社会の生きづらさを経験した者に刺さる内容に

視聴者が『明日』に感情移入できる理由

 生と死についてここまで深く関わる新入社員はジュヌンしかいないだろう。人を救いたい思いも人一倍強い。無茶して空回りしてしまうのは、本気で向き合っているからこそ。偽ることのできない真剣な瞳は、リョンが彼を信頼するに値する。新人としての葛藤をリアルに表現するロウンの好演により、思わずジュヌンの心情に気持ちを重ねてしまう。

 しかしこれまでの業務で、社会の理不尽さや正しいものだけを選択できない現実を突きつけられたジュヌン。社会に出て、関わる世界が広くなればなるほど、自分ひとりの力がどれだけちっぽけなのかを思い知った人も多いだろう。だからチームがあると教えてくれるリョンがいて、ジュヌンがつらい時に「苦渋の選択をしましたね」と缶ビールを差し出してくれるイム代理がいる。ジュヌンの成長と共にこちらも励まされるのは、彼らが「ひとりで抱える必要はない」というメッセージを届けてくれているからではないだろうか。

 このドラマでは、リョンが悪に対してとことん懲らしめる場面が多々ある。ボディブローとアッパーを喰らわせ、地獄よりもつらい生き地獄を与える。不平等な世の中を蹴飛ばしてくれるのは、やっぱり爽快だ。

 死神といえども、誰もが一度は人間として生きていた者たち。その記憶に今も苦しめられているのはリョンだけでないようだ。引導チーム長のパク・ジュンギル(イ・スヒョク)も生前の悪夢により眠れない毎日を過ごしている。しかも2人は生前にも関係があったようだ。私たちもジュヌンも今見えている死神の世界はほんの一部にしか過ぎない。危機管理チームの“本来の目的”が他にあるのか、一緒に追っていきたい。

■配信情報
『明日』
Netflixにて独占配信中
(写真はMBC公式サイトより)

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