『明日』一貫して描く「簡単に死を選ぶ者はいない」姿勢 寿命を全うさせる死神の役割とは

『明日』が一貫して描く姿勢とは

 大企業「走馬灯」の危機管理チームのメンバーは、チーム長ク・リョン(キム・ヒソン)とイム・リュング(ユン・ジオン)代理で構成されていた。2人は自殺志願者を食い止める任務を遂行する“死神”。そこに新しく加わったのは、“半分人間で半分幽霊”になってしまった青年チェ・ジュヌン(ロウン)。橋の上から身を投げそうとした人を助けて昏睡状態になり、半年間だけ契約社員としてリョンらと働くことになったのだ。携帯に表示されたネガティブ度が高い者たちの前に現れ、3人は今日も人を救う。Netflixで配信中の韓国ドラマ『明日』は第5・6話を迎えた。

 これまでも自殺に追い込まれるさまざまな人たちが描かれてきたが、一貫しているのは「簡単に死を選ぶ者はどこにもいない」ということだ。

 第5話で登場したウジンも、子どもの頃から自分を責め続ける日々を送ってきた。やっと幸せになれると思っていた矢先に最愛の妻を交通事故で亡くし、自ら命を断とうとしていたのだ。ここでは、自然死以外の死は外的要因であり、前世の業や運命とは関係ないと言われている。つまり、人の死は誰のせいでもないわけだ。だとしたら、残されたウジンは誰かの人生を背負うのではなく、自分の人生を生きていく意味を見つけなければならない。

 実は、ウジンが自殺を試みたのは初めてではなかった。当時、ラジオから流れた音楽を聞いて思いとどまったのだ。どん底に落ちる時もあれば、救われる時もある。ウジンがミュージシャンを目指したように、生きる希望となることだってある。立ち直るきっかけは、本当に些細な瞬間にあるのかもしれない。

 「死んだら解決すると?」「死んだ人に会えるとでも?」「それで後悔しないと言える?」。リョンの言葉は、自分が経験してきたかのように聞こえる。また、生きる者に対し、「この世で過ごす短い間、人を愛して大切にするのは明日を生きる人の義務」だとも。まるで自分みたいに後悔しないでほしいとのメッセージを送るかのように。

 リョンはクールに見えるが、自殺を絶対に食い止めるという思いは誰よりも強い。その反面、時折目をうるませ、死神なのに死と向き合うことに慣れていない姿があった。いつまでも慣れないということは感情があるという証拠である。少しずつ明かされるリョンの過去。赤色のアイシャドウをする理由、朝鮮時代に生きた少女、黒く蝕まれていく右手、赤い糸…...。何よりなぜリョンがそこまでするのか、明確な理由があるはずだ。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「海外ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる