『バブル』『SPY×FAMILY』『王様ランキング』 独特の表現技法で躍進するWIT STUDIO
トレンドだけを追わず、多彩な映像の可能性を追求
この10年、WIT STUDIOはアニメファンの期待に応える作品を作ってきたが、同社はトレンドだけを追いかけているわけでなく、アニメ表現の幅広い可能性を追求し続けている。
そんな同社の姿勢を象徴するのが、昨年から今年3月まで放送された十日草輔原作の漫画をアニメ化した『王様ランキング』だ。近年のアニメのトレンドから大きく外れたキャラクターデザインで、20世紀のテレビアニメ的な質感の作品を現代に蘇らせ、古き良きシンプルなアニメの魅力とWIT STUDIOが培ってきたアクション描写を融合させた見事な作品だった。総作画監督とキャラクターデザインを務めた野崎あつこの手腕が光り、少ないシンプルな線でも多数のキャラクターの個性を描き分けている。
その他、近年の挑戦的な作品として、ながべ原作の漫画『とつくにの少女』のアニメ化が挙げられる。単行本特捜版の付録という扱いだが、一般的な日本の商業アニメでは見られない、アーティスティックな作風に挑んでいる。
『とつくにの少女』を監督した久保雄太郎と米谷聡美の2人は、実写映画『やがて海へと届く』の作中に挿入されるアニメーションも担当している。こちらは水彩画タッチのアニメーションで、登場人物の内面世界を描写しているのだが、生命の連鎖を神秘的なイメージで表現しており、映画全体の大きな核となっている。
WIT STUDIOは手描きアニメだけでなく、ストップモーションも手掛けている。『PUI PUIモルカー』で一世風靡した見里朝希監督とともに新スタジオを設立し、絵以外にまで領域を拡大しアニメーションの可能性を追求している。
さらには、実写映画への制作出資まで行っている。前述した『やがて海へと届く』の監督、中川龍太郎の作品には2017年の『四月の永い夢』以降の制作に継続して参加しており、もはやアニメスタジオの枠にとどまらず、(中心はアニメ制作だが)総合的な映像制作スタジオのようになっている。
人材育成にも積極的
良質な作品を作り続けるためには、優秀な人材を確保せねばならない。製作本数の増加によってどこのスタジオも人材確保に苦労する中、WIT STUIDOは育成にも大きく力を入れている。
同社は、2021年よりNetflix、ササユリ動画研修所と共同で「WITアニメーター塾」を開校。商業アニメで通用する動画マンを育成することを目標にしており、受講料と在籍期間中の生活費の支援も行っている。今年からは原画マンの育成も手掛けるそうで、豊富な人材を擁する充実したスタジオ体制に向けての足場固めを行っている。
育成地盤が固まれば、今後もWIT STUDIOは安定して良質な作品を提供し続けてくれるだろう。『SPY×FAMILY』も大ヒットの予兆があるし、同社の次の10年はさらなる飛躍と活躍が期待できるだろう。
■公開・配信情報
『バブル』
4月28日(木)Netflixにて全世界配信
5月13日(金)全国劇場公開
監督:荒木哲郎
脚本:虚淵玄(ニトロプラス)
キャラクターデザイン原案:小畑健
声の出演:志尊淳、りりあ。、宮野真守、梶裕貴、畠中祐、広瀬アリス、千本木彩花、井上麻里奈、三木眞一郎、広瀬アリス
オープニングテーマ:「Bubble feat. Uta」Eve(TOY'S FACTORY)
エンディングテーマ:「じゃあね、またね。」りりあ。(VIA / TOY'S FACTORY)
制作:WIT STUDIO
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2022「バブル」製作委員会
公式サイト:bubble-movie.jp
公式Twitter:@bubblemovie_jp