『元彼の遺言状』で月9の“脱ラブストーリー”化は完成か 第1話から怪しさ醸す大泉洋
前クールには『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)が放送され、この4月期からは『元彼の遺言状』(フジテレビ系)。遡ってみれば、ここ数年フジテレビの「月9」枠は医療ものをはじめとした職業ものやミステリー作品が続いており、もう本格的に“脱ラブストーリー”化が完成された印象だ。
『元彼の遺言状』は、2020年に「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した新川帆立の同名小説を原作としている。同賞の受賞作が民放プライムタイムの主要な枠で連ドラとなるのは『チーム・バチスタの栄光』以来であり、また同賞受賞作の映像化に綾瀬はるかが主演するのは映画『完全なる首長竜の日』以来ということか。
“勝ち”と“利益”にこだわるやり手の弁護士・剣持麗子(綾瀬はるか)は、ある案件での強引さが仇となり大手法律事務所を辞めることに。自棄になって一人焼肉に講じていたところ、大学時代の元彼である森川栄治(生田斗真)が亡くなったという報せが届く。するとそこに、まったく面識のないはずの篠田(大泉洋)という男から連絡が。栄治のサークルの先輩で、栄治が療養していた別荘の管理人をしているという篠田は、ある依頼を麗子に持ちかける。それは「全財産は、僕を殺した犯人に譲る」という栄治の不可解な遺言に則り、自分を栄治殺しの犯人に仕立て上げてほしいというのだ。そして麗子は、“犯人選考会”なるものが行われる軽井沢の別荘へと出向くことに。
4月11日に放送された第1話はミステリーの定石通り、怪しげな登場人物たち――栄治の親族ら彼を取り巻く人物たちのぎくしゃくとした空気感を見せることに徹していた。大手製薬会社の御曹司で、多額の遺産を相続した栄治。その製薬会社の社長である父・金治(佐戸井けん太)を筆頭に、叔母の真梨子(萬田久子)、従兄の拓未(要潤)とその妻で栄治の元カノでもある雪乃(笛木優子)。栄治に好意を寄せていた従妹の紗英(関水渚)、元カノのひとりで看護師の朝陽(森カンナ)、顧問弁護士の村山(笹野高史)、愛犬の主治医である堂上(野間口徹)とその息子の亮。そして栄治に瓜二つの兄・富治(生田斗真/一人二役)。
劇中にはアガサ・クリスティーの名著『ねじれた家』が登場する。これは言うまでもなく、本作と同じような“遺産相続ミステリー”の代表的な作品であり、劇中で篠田が語るようにミステリーおいてはその定番の動機として「金」「恋愛」「復讐」が挙げられる。“遺産相続ミステリー”の奥ゆかしいところは、一見「金」が主要な目的でありながら、時に「恋愛」や「復讐」もしくはそれ以外の動機も包括するところにあろう。
最近では東野圭吾の『危険なビーナス』がTBSでドラマ化されたりと、連続ドラマとしていくつかの枝葉に散らしながら見せていく上ではもってこいの題材といえよう。どうやら本作では原作とは異なるオリジナルの展開と結末が用意されているとのことで、どのような脚色が施されるのかは見ものだ。