ライアン・レイノルズの魅力が凝縮された『アダム&アダム』 バディものの新たな代表作に

肩肘張らずに観られる『アダム&アダム』


 ライアン・レイノルズは本作でもクスッと笑えるキャラクターを見事に演じている。『フリー・ガイ』や『レッド・ノーティス』など近年の出演作を鑑みると、ライアンが出演しているというだけで、コメディであることを第一に想像してしまうほどであるが、本作でもライアンのコメディアンぶりを堪能することができる。

 つくづく思うのだが、ライアン・レイノルズはかっこよくなりすぎないキャラクターがよく似合う。目的のために奔走するも、スーパーヒーローのようにはいかなかったり、誰かに巻き込まれたり、反対に巻き込んだり、彼が演じるキャラクターにはちょっとしたアクシデントがつきものだ。ライアン・レイノルズが生み出すテンポの良い小粋な台詞回しは、退屈する間を与えず、私たちを心躍らせてくれる。沈痛な表情さえ、彼が演じると面白く見えてしまう。どんなにピンチな場面でも、涙を誘う感動的なシーンでも、ライアン・レイノルズがいると湿っぽくなりすぎず、絶妙な雰囲気がそこにはある。それでいてシリアスな演技もこなせる器量もある。ときには心の機微を、表情や佇まいに表現してみせる。笑わせてくれたかと思えば、胸を締めつける演技もやってのけるのだ。ライアン・レイノルズが幅広い作品に起用される理由でもあるだろう。

 また子供アダムを演じたウォーカー・スコーベルは、劇中でライアンに負けない存在感を放っている。大人アダムを言い負かしてしまうほどの生意気っぷりから、12歳の子供らしい姿まで、彼の多種多様な表情を味わえる。

 タイムトラベルものというよくある設定でも古臭さを感じない。これまでタイムトラベルものではタブーとされてきた自分自身と出会うという設定が大胆にも取り入れられているからかもしれない。また用語や設定のややこしさがないことや、コメディテイストに仕上げられていることから肩肘張らずに観られるのも魅力だ。

 SFアドベンチャー映画でありながら、自分の過去と向き合う話でもあり、ハートフルな親子の物語でもある。クスッと笑って楽しめ、最後にはホロっと沁みる。肩の力を抜いて楽しんでほしい。

■配信情報
Netflix映画『アダム&アダム』
Netflixにて配信中
監督:ショーン・レヴィ
出演:ライアン・レイノルズ、マーク・ラファロ、ゾーイ・サルダナ
Doane Gregory/Netflix (c)2021

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