『名探偵ステイホームズ』斬新さだけではないドラマとしての面白さ 北村匠海への親近感も
この2年余りの間にすっかり馴染み深くなった「ステイホーム」に、北村匠海をそう呼ぶには若すぎる気もしなくもないが「子供部屋おじさん」というワード。そして「ネット探偵」と呼べば格好良くも聞こえるが、俗に言うところの「特定班」のスキル。4月3日に前編が放送された『名探偵ステイホームズ』(日本テレビ系)は、いかにも2022年的なミステリードラマのスタイルであり、同時にこうしたPC画面を中心に成り立つ作品がもはや“斬新さ”だけではなく、ドラマとしての純粋な“面白さ”を求められていることを再認識させてくれる。
リモート会議中に裏アカで上司の愚痴をつぶやいていたことがバレて、会社をクビになってしまった相田アタル(北村匠海)。むしゃくしゃして酔っ払った勢いでネットサーフィンをし、推しの声優アイドルの不倫に勘付いてしまった彼は、勢い余って誹謗中傷コメントを投稿。翌朝、そのアイドルの事務所から告訴するとの連絡が届いた矢先、家を訪ねてきたのは警視庁公安部の沼田(谷原章介)と坂本(松本まりか)。万事休すと思いきや、“特定”のスキルを買われたアタルは、失踪した地下アイドルの捜査協力を依頼されることとなるのだ。
SNS投稿の文章から“縦読み”を見つけ、ネット上に散らばる噂話を収集してある程度の目星を立ててから当人のSNSへと移行する。そして投稿された画像に写るあらゆる物から情報を引っ張り出し、投稿日時などから行動パターンを割り出して推理を働かせる。ドラマ冒頭でアタルが繰り広げる“特定”の手順は非常にオーソドックスなものだ。情報を引き出したい人物のアカウントが“鍵アカ”であれば、あらかじめ用意してある“捨てアカ”で別人を装ってフォロー許可を得たり、ライブカメラ映像を足取り調査の糸口に使うというのも、家から出ることなくオンライン上で得られる情報をもとに推理を組み立てる現代の“安楽椅子探偵”には必須事項といえよう。
とりわけ興味深いところは、先日まで放送されていた『真犯人フラグ』(日本テレビ系)の中でも出てきたような、動画のバックに流れる音を拡張してみたり、写っている人物の瞳の中の情報を解像度を上げてチェックするといったプログレッシブなことをするまでもなく、アタルは次々と“あり物”の中から必要な情報を得ていくところだろうか。もちろんそれはドラマのテンポを上げるという外側の都合や、主人公の検索力&推理力をわかりやすく描写するという内側の都合が程よく重なり合った結果なのだろうが、かえってSNSの持つ情報量の多さと安易な投稿がはらむ危険性を問題提起することへも繋がるわけだ。