村上虹郎、オダギリジョー、本郷奏多が体現 『カムカム』が描き続けた“一歩踏み出す勇気”
るいの夫で、トランペッターであった錠一郎もまた「一歩踏み出す勇気」を感じさせてくれたキャラクターだ。るいと結婚し、娘のひなた(川栄李奈)も成長する中で、錠一郎はかつて諦めたジャズの道をもう一度模索しようとする。そしてジャズピアニストとして新たな一歩を踏み出したのだ。これは視聴者にとっても予想外の展開だったろう。まさかトランペットに夢中だった錠一郎がピアニストとしてジャズの世界に返り咲くとは。大きな決断と覚悟を持った錠一郎は、私たちに夢と希望を与えてくれた。
そして、アメリカで映画に関わることとなった五十嵐文四郎(本郷奏多)も例に漏れず大きな一歩を踏み出したキャラクターの一人だろう。五十嵐に至っては、ひなたと結婚しなかった理由が理由だけに、アメリカ映画界への進出、そして現地で知り合ったデイジーにプロポーズをするという決断の重さを痛感する。ひなたと同じように「これが人生」だと思わず唸りたくなる前進の仕方ではあったものの、大部屋俳優だったあの日からの大躍進という点では、夢を諦めずに勇気を持って進んでいたキャラクターの最たるものだと感じた。ひなたと再び恋仲になるのでは、という淡い期待は裏切られたが、本郷奏多の表現する文四郎は一本気な時代劇への取り組みとは裏腹な“素直じゃない恋”も魅力であった。
100年を描いた物語には、こうしてさまざまな「勇気」が描かれてきた。誰かが切り拓いた道を、各々がさらに整え、よりよいものへと繋いでいく。時代の移ろいと世代交代を真っ直ぐに描きつつ、どのキャラクターにも深い愛情を注げる作品となった『カムカムエヴリバディ』。最終週を楽しみに見守りたい。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか
写真提供=NHK