村上虹郎、オダギリジョー、本郷奏多が体現 『カムカム』が描き続けた“一歩踏み出す勇気”

『カムカム』勇気を持って踏み出した男たち

 最終週を目前とした『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)。3人のヒロインがバトンを繋ぐ物語にも、グランドフィナーレが待ち構えている。本作はヒロインの人生を三世代に渡り描くことで、100年もの歴史を語ってきた。戦争の時代、高度経済成長期、そして平成へと移り変わる、そんな中『カムカムエヴリバディ』が変わらずに描き続けてきたものがあった。それは「一歩踏み出す勇気」である。

 「三世代のヒロインの100年」を描いたことで、通常の朝ドラよりも、より多くのメインキャラクターが登場したことも本作も面白さだったように思う。親から子へ、そして孫へ。同じ役者が親と子の一人二役を演じることもあれば、一つの役の中で子役や年配の俳優に変わるという工夫も見せつつ、ヒロイン以外のキャラクターにも“三世代”の絆や人生の深みが描かれる。その中でアグレッシブにやりたいことを追い求めるキャラクターが多かったことも印象的だ。

 3人のヒロインたちはもちろん、安子(上白石萌音)の義理の弟である勇(村上虹郎/目黒祐樹)や、るい(深津絵里)の夫となる錠一郎(オダギリジョー)も、「一歩踏み出す勇気」を持って最後まで夢を諦めなかったキャラクターだろう。

 勇は幼少期から生粋の野球バカ。兄である稔(松村北斗)とは正反対で、勉学よりも野球に打ち込み、甲子園を目指して日々頑張っていた。戦争で甲子園出場の夢は叶わぬものの、大人になってからもその野球好きは変わらず、事業の話となればたびたび野球の世界のことを引用して熱弁していた。やがて勇は会社に野球部を作り、実業団チームにまで成長させる。これまでなかったものを新設する試みはもちろん簡単で楽しいことばかりではなかっただろう。それでも勇は、夢を、別な形に変えつつ大きく踏み出した。勇を演じた村上虹郎は、そのキラキラした瞳をずっと絶やさなかった。成長し、雉真の家を継ぐ立場となっても、勇の瞳の奥にはいつも少年のような輝きが宿る。そして晩年の勇を演じる目黒祐樹もまた少年のような笑顔で、野球への愛を貫いた男の幸せな老後を体現してくれた。

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