『カムカムエヴリバディ』の世界に馴染む平埜生成 “いい人”だけど優柔不断の榊原

平埜生成、いい人だけど優柔不断の榊原を好演

 『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)ではひなた(川栄李奈)が映画村で働き始めてから、10年以上が経過した。相変わらずひなたは明るく天真爛漫に仕事に向かっている。実はそれ以上に長く映画村のために働いてきた人がいる。榊原誠(平埜生成)だ。

 榊原はひなたが「ミス条映コンテスト」に出場したことも覚えており、「僕が審査員やったら特別賞あげたんやけどなぁ」と声を掛ける。爽やかな笑顔から発せられるその言葉がおべっかでもなんでもなく、本心なのだと感じさせる。榊原はひなたの男性版のようなもので、一目見ただけで“いい人”なのが丸わかりなのだ。

 榊原は仕事もできる。まず、「ミス条映コンテスト」は榊原の発案だ。実際にミス条映に選ばれた女性がどれくらい活躍したのかはわからないが、時代劇を、映画村を守ろうという志を持ち、寡黙な伴虚無蔵(松重豊)に気に入られ、二代目モモケン(尾上菊之助)にも関わりがあったひなたを引き当てた功績は大きいだろう。本人は知らないのかもしれないが、榊原はひなたと五十嵐(本郷奏多)を引き合わせたキューピット役も担っている。

 さらに女優の美咲すみれ(安達祐実)に目をかけ、彼女を売れっ子にするために奔走する。女優として落ち目だったすみれをなんとか説得し、映画村のショーに出演させる。しかも、そのためにわざわざすみれが得意だという茶道がメインとなるショーを企画するし、メインにするからには恥ずかしくないように、と茶道を教える一恵(三浦透子)に頼み込んで稽古をつけてもらう。すみれの機嫌が悪くなるのは折り込み済みで、ひなたと一緒になってすみれのフォローまでしたのだった。榊原は全体がいい方向にいくよう、腰を低く、粘り強く、真摯に、真面目に仕事に取り組んでいる。

 これほどまでに“いい人”である榊原を演じているのは、平埜生成だ。昭和後半の時代を描いていた『カムカムエヴリバディ』にすっと馴染む渋めの好青年顔をしているが、平埜本人は平成生まれというのだから驚きだ。同世代には、浅香航大や磯村勇斗など、実力派の俳優が揃っており、平埜もそのひとりといえるだろう。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アクター分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる