『カムカムエヴリバディ』で描かれたカップルを総括 100年で変化した恋愛の始まり方
祖母、母、娘の3世代親子を描くNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』。3世代100年の物語も終盤に差し掛かっている。この100年、ヒロインもバトンタッチしてきたが、それにあわせて職人たちが懸命に働き、悲惨な戦争のあと、立ち上がった岡山の街並み、活気と堅実な生活のある大阪の街並み、穏やかな日常がある京都の街並みと、舞台とその街の描き方も変化してきた。そしてこの100年の物語はヒロインたちの心と人生を大きく動かしてきた恋愛の始まり方やその相手との接し方の変化をも描き出しているように感じる。
安子(上白石萌音)の時代、恋愛の始まり方の主流はお見合いだった。安子の父である菓子職人の金太(甲本雅裕)は、小豆農家の娘だった小しず(西田尚美)とお見合い結婚している。安子にも砂糖製造会社の息子との見合い話が持ち上がったことがあるし、地元の有力企業・雉真繊維の跡取り息子だった稔(松村北斗)にも、もちろん見合い話があった。だが、商店街にある「たちばな」の店先で出会ったふたりは恋に落ち、双方の親に反対されることもあったが、最終的には見合いを断り、想いあった相手を選んだ。時代の流れに反し、己を貫いた安子と稔の決断がふたりの恋をさらにロマンチックなものにしたといえる。
るい(深津絵里)の時代の恋愛の始まり方はもっと自由だ。自分の好きだと思う相手にどんどんアプローチしていける。るいは働いていた竹村クリーニング店の店先で錠一郎(オダギリジョー)と出会う。食べこぼしが酷く、不定期に来ては大量にクリーニングを出していく錠一郎にるいは、好意を抱くどころかその生態を怪しんでさえいた。錠一郎は、るいをキラキラとしたジャズの世界へと誘い、わかりにくいアプローチを続け、るいと錠一郎の恋は、ジャズトランペッターと彼の一番のファンとの恋に変化した。自由に恋愛ができる時代になったからこそ、夢のある恋がすぐそばにあったということなのだろう。