現代人の感情を体現する森永悠希 『逃亡医F』『ミステリ』などに引っ張りだこのワケ

森永悠希が体現する現代人の感情

 現在放送中の菅田将暉主演のドラマ『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)や、成田凌主演の『逃亡医F』(日本テレビ系)にゲスト出演し、3月18日に公開された映画『KAPPEI』にも警察官役で出演するなど、若手名脇役として数々の作品に引っ張りだこの俳優・森永悠希。Netfixオリジナルシリーズ『今際の国のアリス』で国内外ともに注目を浴び、最近ますます出演作が増えている注目俳優の一人だ。そこで、これまでのキャリアを振り返り、森永の魅力について掘り下げてみたい。

『今際の国のアリス』Netflixにて独占配信中

 独特の可愛らしい容姿と声を持った柔和な存在感を武器に、確かな演技力で数多くの作品に出演してきた森永。最近では優柔不断だったり、斜めに構えていたり、小心者、嫌味な人、おとなしく真面目な役など、ネガティブな感情を吐露していく演技が上手い役者という印象がある。

 大阪府出身の森永は、4歳で芸能界に入りした芸歴22年の若きベテラン。まず天才子役として注目を集めた作品が、落語を題材にした2007年の映画『しゃべれども しゃべれども』。国分太一演じる落語家に話を習う生徒の1人で、クラスになじめない関西弁の少年を演じた。終盤に披露した落語「まんじゅうこわい」では、若干10歳ほどで、手本にした桂枝雀のアドリブまで完全に再現する。喜怒哀楽に満ち溢れ、何より落語をすることの喜びが目一杯伝わる演技が話題となった。2011年公開の映画『プリンセス トヨトミ』では、幼いころから女性に対して憧れを持つ、坊主頭でセーラー服姿のいじめられっ子役を演じ、中井貴一を相手にインパクトのある演技を見せた。この作品で、役者という仕事は、自分が普段体験することのない、他の人の人生を歩むことができる仕事で、芝居の楽しさを感じるようになったとDeviewのインタビューにて語っている。

 子役時代からNHKに愛される役者でもあるということが、彼の演技力が認められている証拠でもある。2007年の連続テレビ小説『芋たこなんきん』への出演を皮切りに、2009年の『ウェルかめ』ではヒロインの弟役でレギュラー出演し、2017年にも『べっぴんさん』に出演。また大河ドラマでは、2012年に平資盛役で『平清盛』、2015年にはヒロイン・杉文(井上真央)の弟・杉敏三郎という重要な役で『花燃ゆ』に立て続けに出演。特に、聴覚障害を持つ三郎役は、森永が出演した2月26日放送の『武田梨奈のこだわりな時間』(ラジオ関西)で、役者として芝居に関わるうえで意識を変えた作品の一つとして挙げていた。子役時代から感情表現が上手い森永だが、言葉を使わない役は彼にとって挑戦だったという。「言葉だけにすごく頼ってはダメなんだな」と、芝居のアプローチとして言葉に頼らない演技を意識するようになったことで、言葉や態度とは裏腹な感情が伝えられる演技ができるようになったところが、今の森永の演技の特徴であり、ネガティブな役が上手い理由だと考える。

『ちはやふる -結び-』(c)2018 映画「ちはやふる」製作委員会 (c)末次由紀/講談社

 番組で彼がもう一つ挙げた作品は、映画『ちはやふる』。世代が近い役者たちとの共演がお互い刺激で、芝居の殻をひとつ破ることができたという。確かにこれまでは、子供として大人と対等に渡り合えることが“演技派”と呼ばれる一つの要因だったのかもしれないが、これが野村周平や佐野勇斗など同世代との共演となると、嫉妬や絆がより伝わる熱い演技を見せていく。競技かるた部の青春を描いた今作で演じた駒野勉こと“机くん”は、勉強ばかりしている秀才キャラで、かるたは初心者。当初は斜に構えた性格で、仕方なく部活に付き合っている素ぶり見せていたが、初めて人に頼られたことで、密かにかるた部に情熱を注いでいく。

『ちはやふる -結び-』(c)2018 映画「ちはやふる」製作委員会 (c)末次由紀/講談社

 特に『上の句』は、影の主役と言えるほど机くんが部員と絆を築き成長していく物語が描かれた。強い相手の当て馬として仲間に扱われたことに、「数合わせだったんだろ!」と感情を爆発させたり、語りながら泣き崩れていくシーン。これまで言葉と思いが反比例する態度をとっていた彼が本気で思いを伝える時、言葉以上の感情が溢れ出たことを表す森永の演技は、実に感動的で心に響くものだった。

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