『ガンパウダー・ミルクシェイク』アクション映画大好き人間の遊び心とハードボイルド魂

怪作映画『ガンパウダー・ミルクシェイク』

 しかし、こうした遊び心がいっぱいな反面、本作は決してノリだけの映画ではない。それは常に劇中で「殺人」や「暴力」への厳しい視線が置かれているからだ。この類の映画では、基本的に正義のための殺人は無罪である。それこそ『男たちの挽歌II』でチョウ・ユンファたちが100人くらいマフィアを撃ち殺しても、決してそれは罪として描かれず、むしろ男の勲章として処理された。もちろんそれはそれでOKなのだが、本作は殺人を「取り返しのつかない罪」と捉えている。そして物語のテーマの一つとして「殺人に手を染めた人間/手を染めざるを得なかった人間が、次の世代のために何ができるか?」が描かれていく。

 それだけではなく、本作には力強いメッセージもある。それは問題に対して手を汚さずに静観するだけではダメだということだ(これはハッキリと台詞で語られる)。たとえロクでもない未来しかなくても、目の前の問題を解決したければ、行動しなければならない時もある。この堅いテーマとメッセージ性があるからこそ、本作は「細かすぎて伝わらない古今東西のアクション映画モノマネ大会」ではなく、オリジナリティあふれる映画になっているのだろう。

 死闘の末に主人公らが下す決断は、まさに“落とし前”という表現が相応しい。後味は爽快かつホロ苦い。ガチンコ極まりないメッセージ性と、アクション映画大好き人間の遊び心。ともすれば水と油になりがちな2つの要素を見事に合わせた1本だ。あと個人的にミシェール・ヨーが近年ドンドンとハリウッドで大活躍しているのが嬉しい限りです。

■公開情報
『ガンパウダー・ミルクシェイク』
3月18日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
監督・脚本:ナヴォット・パプシャド
出演:カレン・ギラン、レナ・ヘディ、カーラ・グギーノ、クロエ・コールマン、アダム・ナガイティス、ミシェル・ヨー、アンジェラ・バセット、ポール・ジアマッティ
配給:キノフィルムズ
提供:木下グループ
2021年/フランス・ドイツ・アメリカ合作/英語/カラー/スコープサイズ/DCP/114分/原題:Gunpowder Milkshake/PG12
(c)2021 Studiocanal SAS All Rights Reserved.
公式サイト:https://www.GPMS-movie.jp
公式Twitter:@GPMS_JP

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる