『39歳』で描かれる幸運と悲運の対比 悲しみは一人で背負うものではない

『39歳』で描かれた幸運と悲運の対比

 一方、ジュヒは知り合って間もない近所のレストランシェフであるパク・ヒョンジュン(イ・テファン)にチャニョンのことを曝け出す。親しい間柄ではなくても“話を聞いてくれる人”に救われる時もあれば、それをきっかけに距離が縮まることだってある。1人で生きる強さを持つ3人に、1人では立ち直れない出来事が起きた。今回、“悲しみは1人で背負うものではない”と教えてくれたのは、ソヌやヒョンジュン、そしてジンソクだったように思う。

 抗がん剤治療を受けてほしいミジョは何度も説得を試みるが、チャニョンの答えは変わらない。チャニョンに「私の人生だから」と言われればそれまでだ。彼女の人生があるように、ミジョとジュヒの人生もある。チャニョンがいなくなっても2人は明日を生きなければならない。自分を励ますために、悲しみを分け合ってもいいじゃないか。大切な人を元気付けたいなら、自分が元気でないと意味がないのだ。

 ジュヒは当選した宝くじをシュレッダーにかけ、人生で初めて訪れた大きな幸運をチャニョンに譲ることにした。ミジョは「最高のラストを飾ろう」と精一杯楽しい時間を過ごす選択をする。できなかったことリストの一つとして、当時、医大生だったミジョの服装がダサくて入場できなかったナイトクラブに再挑戦する3人。あからさまに馴染んでおらず、踊りもダサい。「なんだ、あの頃と同じじゃないか」と思わず笑いがこみ上げてしまう彼女たち。でも、きっとそれでいいのだ。さっきまで泣いていたのにもう笑ってる、そうやって過ごしてきた3人だから。

 ところが、3人が最高の終わりに向けて最高のスタートを切った日は、ソヌにとってひどく傷を負う日となった。同じ場所をグルグルしていたミジョの手を引いてくれたソヌの手を、次はミジョが掴む番だ。これから彼らは、誰かのために、自分のために生きる姿を見せてくれるだろう。

■配信情報
『39歳』
Netflixにて独占配信中
(写真はJTBC公式サイトより)

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