いしづかあつこ監督が新作『グッバイ、ドン・グリーズ!』で描いた『よりもい』との違い
『ノーゲーム・ノーライフ』(2014年)、『宇宙よりも遠い場所』(2018年、以下『よりもい』)を手掛けたいしづかあつこ監督の初の劇場版オリジナル作品となる『グッバイ、ドン・グリーズ!』が現在公開中だ。本作は、地方の田舎町を舞台に、冴えない少年3人組が繰り広げる冒険と、その体験がもたらす成長を描いたジュブナイルドラマ。監督、脚本をいしづかが務め、キャラクターデザインには吉松孝博、さらに制作にマッドハウスという『よりもい』のスタッフに加え、花江夏樹、梶裕貴、村瀬歩といった当代きっての人気声優が集結した爽やかな感動作である。
いしづか監督といえば、学生時代よりアニメーション作家として活躍し、数々のコンテストでの受賞実績を重ねたのちマッドハウスに入社した逸材。TVアニメでは『青い文学シリーズ』や『さくら荘のペットな彼女』、『ノーゲーム・ノーライフ』などを経て、2018年に初のオリジナル作品『宇宙よりも遠い場所』を発表した。それぞれの境遇で生きてきた4人の少女たちが民間観測隊「南極チャレンジ」に同行し南極を目指すというドラマは、アニメファンはもとより一般視聴者にも広くリーチ。「ニューヨーク・タイムズ」のトップ10ベストインターナショナルドラマ賞を受賞するなど、海外でも高く評価された。それから4年越しとなる新作『グッバイ、ドン・グリーズ!』は、3人の少年が主人公。小さな田舎町で周囲となじめずに暮らすロウマと、彼の中学時代からの親友で都内の高校に進学した秀才のトト、そしてひょんなことからふたりと仲良くなり行動を共にするようになるドロップが、行方不明になったドローンを回収するという目的で遭難さながらのサバイバルを繰り広げ、絆を深めていく。
主人公が少女から少年へと変わってはいるものの、友情と絆をテーマに彼らの成長を追うという目線など『よりもい』と共通する部分は多い。加えて、『よりもい』の少女たちが南極を目指したように、今作でも世界ヘ飛び出す展開が用意されている。ネタバレしない程度で明かすと、本作は3人の冒険の顛末と、その後の出来事の2段構えの構成となっており、クライマックスの舞台となるのがアイスランド。窮屈な日常を抜け出し、広い世界を知るワクワクと不安を、私たちはスクリーンの前で追体験することになる。『よりもい』を観た人なら期待してしまう(かもしれない)泣きドコロも、もちろん押さえている。