NHK名古屋ドラマ制作撤退を惜しむ 『中学生日記』『のほほん』など名作を生んだ独自性

撤退のNHK名古屋制作ドラマ、名作の数々

 NHK名古屋放送局が、ドラマ制作から撤退するという。2022年の新年度からNHKは夜の時間帯の大幅改革を行う方針で、報道番組を強化し、バラエティやドラマは制作規模を縮小するそうだ。時代の流れと言ってしまえばそれまでだが、ネットの普及によってメーテレ(名古屋テレビ)などの地方局制作のドラマに注目が集まりやすくなっている中、積極的に地方での番組作りをおこなってきたNHKが撤退することは、まことに残念である。

 名古屋放送局が作るドラマには隠れた名作が多かった。一番の代表作はやはり『中学生日記』だろう。本作は1972年から2012年まで放送された中学校を舞台にしたドラマだ。基本的には中学生の日常や悩みを1話完結で描く作品となっており、出演する中学生が芸能事務所に所属する俳優やアイドルではなく、オーディションで選ばれた名古屋近郊で暮らす素人の中学生だったということが一番の特徴だった。ドラマとしては地味な作りだったが、だからこそ、独自の生々しさが画面の中に存在した。ドラマというよりはドキュメンタリーを観ている印象に近かったと記憶している。

 漫画家・水木しげるの戦争体験をドラマ化した『鬼太郎が見た玉砕~水木しげるの戦争~』(2008年)や、振り込め詐欺の実態をドキュメンタリーパートとドラマパートで描いた『詐欺の子』(2019年)といったNHKスペシャルで放送された作品も、ドキュメンタリーとドラマが混ざりあったような独自の作品だった。

 企業の粉飾問題を調査する公認会計士を主人公にした『監査法人』(2008年)、ゼネコン会社の入札をめぐる談合の内幕を描いた『鉄の骨』(2010年)、太陽光発電の最先端技術をめぐる特許マフィアとの戦いが描かれた『太陽の罠』(2013年)といった会社を舞台にしたビジネスドラマの傑作も名古屋局は多く制作している。取材を元に作られたドキュメンタリー的な手触りのシリアスなドラマというのが、NHK名古屋放送局が作るドラマの大きな特徴だろう。

 一方、コメディテイストのドラマにも傑作が多かった。たとえば、『ちょっと待って、神様』(2004年)は、不慮の事故で命を落とした中年女性の久留竜子(泉ピン子)が女子高生・天城秋日子(宮崎あおい)の身体を借りて現世に戻り、期限付きで人生をやり直すというファンタジーテイストのドラマだ。

 竜子の魂が乗り移ったことで秋日子が明るい女の子に変化していく姿が本作の見どころで、宮崎あおいが女子高生役を好演していた。その後、本作の浅野妙子(脚本)と銭谷雅義(制作統括)が手掛けた連続テレビ小説『純情きらり』で宮崎あおいは主演を務め、国民的女優としての道を邁進するようになる。

 本作がなければ『純情きらり』、大河ドラマ『篤姫』といったNHKドラマでの活躍もなかったかもしれない。

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