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『トクサツガガガ』特撮オタクがしびれた実写化 “好き”を楽しむ尊さや処世術を学べる物語に

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 まさかのNHKでの映像化となった『トクサツガガガ』は、隠れ特撮オタクのOL・仲村叶の日常を描いた人気漫画の実写ドラマ版である。Twitterを中心に毎週のように話題沸騰だった本作は、惜しまれつつも全7回の放送で幕を閉じた。「特撮」という二文字が指す作品は挙げていけばきりがないが、同作では主に、『秘密戦隊ゴレンジャー』(75年)から続く「スーパー戦隊シリーズ」を模した作品が主軸に置かれている。

 原作である漫画版がビッグコミックスピリッツで連載開始された頃、特撮オタク界隈ではちょっとした話題となった。「特撮オタク」の漫画で、それも女性を主人公に据えるというのは、やはり物珍しかったからだ。筆者は男性だが、幼少期から「スーパー戦隊シリーズ」を始めとする特撮作品を愛好してきたひとりとして、作中で連発される「特撮オタクあるある」を楽しみながら連載を追いかけてきた。

 同作の核となる部分は、いわゆる「特撮シーン」である。劇中劇『獅風怒闘ジュウショウワン』のヒーローたちが、仲間と手を取り合い、時には敵と戦い、一年間の放送期間(という設定)の中で、物語を展開していく。漫画版では、「日常パート」と「特撮シーン」を交互に描くことで主人公の内面を掘り下げていくため、実写ドラマ版となると、自ずと、「特撮シーン」の実写化に期待が高まる。本当に、『ジュウショウワン』の面々が漫画のように活躍してくれるのだろうか。

 いざドラマが始まってみると、驚くほどのクオリティで特撮ヒーローたちが暴れ回っていた。それも当然、「特撮協力」として、本家本元の「スーパー戦隊シリーズ」や「仮面ライダーシリーズ」を長年制作する東映株式会社がクレジットされているのだ。この「特撮シーン」の異常なまでの作り込みが、実写ドラマ版『トクサツガガガ』を見事に成立させている。以下、そのこだわりの数々を、特撮オタクの目線から挙げてみたい。

 まず何より、劇中ヒーローのスーツ造形である。『獣拳戦隊ゲキレンジャー』(07年)を彷彿とさせる猫科モチーフのデザインを、こちらも本家本元、レインボー造型企画株式会社が手掛けている。同社は、『太陽戦隊サンバルカン』(81年)をはじめとする「スーパー戦隊シリーズ」の多くの作品でスーツ造形を担当しており、その質感、色味、機能性に至るまで、『ジュウショウワン』にも確かな技術が注がれている。

 また、ヒーロースーツのマスク(いわゆる「面」)についても、並々ならぬこだわりが見える。往々にして、映像作品として撮影する際の「面」と、ヒーローショーで活躍する場合の「面」は、造形が異なる。前者は、カメラ映えする緻密な造形と引き換えに、視認性を大きく犠牲にしている。対する後者、俗に言う「アトラク面」は、視認性の確保を優先した穴が特別に空いている場合が多く、ヒーローショーでは主にこちらが用いられている。劇中のヒーローショーのシーンでは、なんとこの「アトラク面」が登場。わざわざマスクを複数制作し、シーンによって使い分けているのだ。これには、驚くと共に声を上げて興奮してしまった。

 ヒーロースーツを着てアクションを披露する俳優をスーツアクターと呼ぶが、同作には、有名スーツアクターの岡元次郎氏が参加している(エマージェイソン、ゲンカ将軍の二役を担当)。氏は、『仮面ライダーBLACK』(87年)で主役である仮面ライダーBLACKを演じ、その凄まじい動きのキレと圧倒的な存在感で視聴者を魅了した。後年の『仮面ライダー龍騎』(02年)では、殺人犯が変身する悪の仮面ライダー、王蛇を担当。容赦なく命を奪う凶悪な仮面ライダーは、氏の力強く妖艶な演技もあり、高い人気を博した。

 ヒーローも、悪役も、そのどちらも見事に演じ分けられる岡元次郎という名優は、『トクサツガガガ』でもそのポテンシャルを存分に発揮。ゲンカ将軍として主人公を苦しめたかと思えば、エマージェイソンとして窮地に颯爽と駆けつける。「特撮」という劇中劇を体現する、重要なキャストのひとりなのだ(最終回では、まさかの「素面」でのサプライズ登場となった)。

 また、そんなヒーローたちが活躍するロケ地についても、これまた本家本元である東映の御用達、「岩船山」が使用されている。誰もが一度は観たことがあるだろう、建造物がひとつもない、切り崩された採石場跡地。特撮オタクにはもはやメッカでもあるその場所で、幾度となく盛大な爆発が起こり、多くのヒーローがポーズを決めてきた。『トクサツガガガ』はNHK名古屋放送局によって制作されているが、「岩船山」は栃木県栃木市に位置している。愛知から栃木、400キロを超えるこの距離を妥協しない制作スタイルなのだ。

 他にも、『仮面ライダー電王』(07年)などで特撮に縁の深い声優・鈴村健一氏がナレーションを務めたかと思えば、『行って帰ってきた烈車戦隊トッキュウジャー 夢の超トッキュウ7号』(15年)を手掛けた女性監督・荒川史絵氏が助監督として参加するなど、同作の「こだわり」は枚挙にいとまがない。

      

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