『逃亡医F』成田凌×松岡昌宏の近づく距離 愛する人を失う痛みが作品のテーマに

『逃亡医F』成田凌×松岡昌宏の近づく距離

 逃亡を続ける藤木(成田凌)は、荷物を盗もうとした中国人女性・チュンヤン(森迫永依)の下肢に異常を発見した。医師であることを明かし、病院に行くことをすすめるが、チュンヤンは不法滞在の外国人労働者であり、病院に行くわけにはいかないという。あくまで応急処置ではあるが、藤木の治療によってチュンヤンの体調は安定。それを見たモー(中村蒼)や労働者たちは、藤木に心を開く。

 藤木は、都波(酒向芳)が登壇するシンポジウム当日の水曜日まで、ここに滞在させてくれないかと、彼らに頼む。冤罪で追われている身であることも、自ら明かした。その事実に驚き、動揺する彼らだったが、モーは藤木を受け入れる。指名手配犯と不法滞在者、形は違えど「見つかればアウト」の状況は同じだ。モーは「持ちつ持たれつ」だと、生きるために助け合うことを迷惑とは言わないと、藤木を自分たちの住処におき、親切に接した。藤木もまた、長谷川(桐山照史)に連絡をとり、彼らの住処に医薬品を補充。親切に、親切を返した。肩書きもレッテルもない、人間同士の友情と信頼が、彼らには芽生えていた。

 一方、同じ廃団地に身をおきながら、国籍が違うというだけで虐げられ続ける外国人労働者たち。モーも彼らも、母国では優秀な人材だ。母国の発展のため、知識や技術を得たいと、夢見て日本にやってきた。けれど今では「存在するだけで罪」ーー法律上はたしかにその通りなのだが、自らを形容にするにはあまりにつらすぎる言葉だ。僕が好きだった日本はここにはない、とつぶやいた言葉も。

 そして水曜日。みな、藤木が無事に都波に会えることを願い、万全の準備をして見送る。チュンヤンが体調を崩したことも隠し通して。けれど藤木は戻ってきた。捕まってもいいから病院に行こうと、チュンヤンの説得を試みるモーの言葉に、藤木は反対する。愛する人が抱きしめられる距離にいることの尊さ、愛する人を失うことのつらさーー自身の苦しみや悲しみを彼らに重ね、チュンヤンの治療をさせてほしいと申し出る。藤木がこれまで、迷いながらも人々を救ってきた理由、その根底には「自分と同じ悲しみを誰にも味わわせたくない」という思いがあったのかもしれない。

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