第94回アカデミー賞ノミネーション予想 『ドライブ・マイ・カー』『スパイダーマン』は?

第94回アカデミー賞ノミネーションを予想

監督賞

ジェーン・カンピオン(『パワー・オブ・ザ・ドッグ』)
ケネス・ブラナー(『ベルファスト』)
ドゥニ・ヴィルヌーヴ(『DUNE/デューン 砂の惑星』)
ポール・トーマス・アンダーソン(『リコリス・ピザ』)
スティーヴン・スピルバーグ(『ウエスト・サイド・ストーリー』)

次点:
濱口竜介(『ドライブ・マイ・カー』)
マギー・ギレンホール(『ロスト・ドーター』)
ペドロ・アルモドバル(『Parallel Mothers(英題)』)
アダム・マッケイ(『ドント・ルック・アップ』)

 受賞はジェーン・カンピオンでほぼ決まりだが、最大の混戦になりそうな監督賞。ポール・トーマス・アンダーソン以下6名は誰が入ってもおかしくない。繰り返しになるが、ノミネーションは各支部に所属する同業者が選出する。全米監督協会賞(DGA)や全米脚本家協会賞(WGA)などの結果と、投票期日が近いBAFTA(英国アカデミー賞)の傾向が参考になる。

脚本賞

ケネス・ブラナー(『ベルファスト』)
ポール・トーマス・アンダーソン(『リコリス・ピザ』)
アダム・マッケイ(『ドント・ルック・アップ』)
アーロン・ソーキン(『愛すべき夫妻の秘密』)
ザック・ベイリン(『ドリームプラン』)

次点:
ペドロ・アルモドバル(『Parallel Mothers(英題)』)

 監督・脚本(もしくは脚色)を手掛けるクリエイターが多いため、この3つの賞は分け合う場所になる。自伝的要素を含んだケネス・ブラナーの筆致、70年代のロサンゼルス近郊の空気をコメディにした軽さがこの陰鬱な時代に受け入れられたポール・トーマス・アンダーソンに評価が集中し、アーロン・ソーキンやアダム・マッケイといった賞レース常連には少々分が悪い。

脚色賞

ジェーン・カンピオン(『パワー・オブ・ザ・ドッグ』)
シアン・ヘダー(『コーダ あいのうた』)
マギー・ギレンホール(『ロスト・ドーター』)
トニー・クシュナー(『ウエスト・サイド・ストーリー』)
濱口竜介・大江崇允(『ドライブ・マイ・カー』)

次点:なし

 脚色はこの5作品で堅いのではないか。全会員が投票する受賞予想は、ジェーン・カンピオンには監督賞での評価が集中するだろうから、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』以外の4作品にもチャンスがある。役者の生理を深く理解し書かれたマギー・ギレンホールの脚色と、演技の神秘を村上春樹小説と古典的戯曲を重ね合わせた濱口竜介・大江崇允の脚色に票が分かれそう。

長編アニメーション賞

『ミラベルと魔法だらけの家』(c)2021 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
『Flee(原題)』
『あの夏のルカ』(c)2021 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
『ラーヤと龍の王国』(c)2021 Disney. All Rights Reserved. (c)2021 Disney and its related entities
『ミッチェル家とマシンの反乱』(c)Sony Pictures Animation
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『ミラベルと魔法だらけの家』(c)2021 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
『Flee(原題)』
『あの夏のルカ』(c)2021 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
『ラーヤと龍の王国』(c)2021 Disney. All Rights Reserved. (c)2021 Disney and its related entities
『ミッチェル家とマシンの反乱』(c)Sony Pictures Animation
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『ミラベルと魔法だらけの家』
『Flee(原題)』
『あの夏のルカ』
『ラーヤと龍の王国』
『ミッチェル家とマシンの反乱』

次点:
『SING/シング:ネクストステージ』
『竜とそばかすの姫』

 アフガニスタンからデンマークへ難民として逃避行してきた主人公が、夫との結婚を目前に歴史を語る『Flee』は、この長編アニメーション賞のほか、長編ドキュメンタリー賞と国際長編映画賞でもノミネート確実。受賞可能性が高いのは長編ドキュメンタリー賞だが、技術ではなく技法としてのアニメーションが評価される珍しい例。注意すべきは、他のカテゴリーはそれぞれのブランチメンバーがノミネーション作品を選ぶが、長編アニメーション賞と作品賞は全会員に投票権がある。アニメーションに関わりのない会員も投票できるため、メジャー作品や知名度の高い作品が選出される可能性が高いが、『Flee』の場合はそのルールが逆説的に動くだろう。よって、5作品はほぼ定位置で、次点2作品が番狂わせとなる可能性は低い。

国際長編映画賞

『ドライブ・マイ・カー』(日本)(c)2021 『ドライブ・マイ・カー』製作委員会
『Flee(原題)』(デンマーク)
『英雄の証明』(イラン)(c)2021 Memento Production – Asghar Farhadi Production – ARTE France Cinema
『The Worst Person in the World(英題)』(ノルウェー)
『The Hand of God』(イタリア)(c)Gianni Fiorito
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『ドライブ・マイ・カー』(日本)(c)2021 『ドライブ・マイ・カー』製作委員会
『Flee(原題)』(デンマーク)
『英雄の証明』(イラン)(c)2021 Memento Production – Asghar Farhadi Production – ARTE France Cinema
『The Worst Person in the World(英題)』(ノルウェー)
『The Hand of God』(イタリア)(c)Gianni Fiorito
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『ドライブ・マイ・カー』(日本)
『Flee(原題)』(デンマーク)
『英雄の証明』(イラン)
『The Worst Person in the World(英題)』(ノルウェー)
『The Hand of God』(イタリア)

次点:
『Compartment No. 6(英題)』(フィンランド)

 2021年のカンヌ国際映画祭で何らかの賞を受賞している作品、『ドライブ・マイ・カー』(脚本賞)、『英雄の証明』(グランプリ)、『The Worst Person in the World』(女優賞)、『Compartment No. 6』(グランプリ)がオスカーの国際長編映画賞でも強さを示す。『Flee』も2020年のカンヌでプレミアが行われる予定だったが、中止を受けて翌年のサンダンス映画祭に出品され、世界ドキュメンタリー部門審査員賞を受賞している。『The Hand of God』も、ヴェネチア国際映画祭で審査員大賞を受賞。『パラサイト 半地下の家族』に4冠をもたらした配給会社NEONは、『Flee』、『The Worst Person in the World』と『TITANE/チタン』(フランス)の3作品を同カテゴリーにノミネートさせるべく尽力していたが、パルムドール受賞作ながらジャンル映画色の強い『TITANE/チタン』は早々と賞レースから脱落してしまった。

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