『脱出おひとり島』は恋愛リアリティ番組として観やすい? ヒットまでの潮流を考える

『脱出おひとり島』が観やすい理由

 Netflixで韓国発信の作品がアツいのは、今に始まったことではない。常に総合ランキングには韓国ドラマが複数ランクインしている状態で、数年前に比べて「韓国ドラマ好き」という言葉はより一般的な意味として使われるようになったと思う。その中でも、これからさらに新しい風として吹いてきそうなのが、「韓国恋愛リアリティショー」の存在だ。特に『脱出おひとり島』を観ていると、それを強く感じる。

 もともとは元締めのNetflix側がヒットコンテンツの傾向に基づいて、さまざまな番組を制作、または各国のローカル番組のストリーミング権を獲得していると思うのだが、その中でも彼らがダントツで力を入れているのが「恋愛リアリティショー」。いまや立派なNetflixのオリジナルシリーズのビッグジャンルとして、各国のあらゆるシリーズを用意している印象だ。

 そして、一方ではNetflix制作の韓国ドラマが世界的に受け入れられ、人気を高めてきた。YouTubeなどで海外ドラマやアニメなどの番組を視聴しながら、いろいろコメントをしたりリアクションをしたりする、いわゆる「リアクション動画」がコロナ禍で爆発的に伸び、そのリアクターたちがこぞって『イカゲーム』を取り上げはじめたことも、世界中でのブームに火をつけた要因に考えられる。もともと非英語作品は吹替版が存在しない限り、オリジナル言語の字幕版で観ることを強いられるため英語圏の視聴者にとって少し敷居の高さがあった。しかし、リアクターたちが字幕版を動画内で取り上げていることから、「オリジナルを観ること」の価値も相対的に上がったように感じるし、何よりNetflixは“世界に当てに行く”つもりで作った作品には、ほぼ必ず5カ国語程度の吹替版を用意するようになった。この「恋愛リアリティショー」と「韓国作品」のブームの潮流の中で生まれたのが、『脱出おひとり島』なのである。これがヒットしないわけがない。

 簡単に『脱出おひとり島(英題:Single’s Inferno)』の内容を説明しよう。NetflixとJTBCがタッグを組んだ本番組の最終目標は、ありがちだけど、島に訪れた美男美女がマッチングし、カップルになることだ。しかしオリジナリティを感じるのは、その恋の舞台が無人島(通称:地獄島)であること、彼らは滞在期間中プチサバイバルをしなければいけないこと。といっても、すでに用意された限られた食材を使って各々で料理を作らなければいけない、水汲み場が遠いというくらいで、少し不便な林間学校程度のものである。

 そして毎回、彼らは各々相手に知られないように気になる人を指名し、お互いが指名し合ってマッチングしたら何と半日地獄島を脱出し、高級ホテルのスイート(通称:天国島)に二人で滞在することができるのだ。天国島では、二人水入らずで過ごせる他に特別なルールがある。それは、「お互いが個人情報を開示できる」というものだ。何を隠そう、島で過ごす男女は自分の名前以外の情報を秘密にしなければならない。年齢、職業といったことはマッチング後に初めて知ることができるということ。つまり、この番組で男女が誰かに惹かれるまでの動線は「見た目(顔、肉体美)、行動(料理時の活躍など)、年齢、職業」といった順になっているのだ。基本的には一般人が集まっているという趣旨であるものの、蓋をあけてみたら有名YouTuberやダンサーやモデルなどが参加している。

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