アニメ『進撃の巨人』瞳の描写にみるMAPPAの真骨頂 3つの兄弟愛が重層的に描かれる

 エレン・イェーガーとジーク・イェーガー、コルト・グライスとファルコ・グライス、ポルコ・ガリアードとマルセル・ガリアードの三者三様の兄弟の形が描かれ、物語がいよいよ真実へと近づき始めたTVアニメ『進撃の巨人 The Final Season Part 2』の第78話。

進撃の巨人

 「始祖の力」を発動させるため接触を図ろうとするエレンとジーク。しかし前回、ピーク・フィンガーとテオ・マガトの共謀によって奇襲をうけたジークは致命傷を追ってしまった。そこで最後の手段である「叫び」(脊髄液を注入した人間の巨人化)をジークは発動しようとするが、そこに突如として声が鳴り響く。――弟は巻き込まないでくれ! コルトは脊髄液を口にしてしまった弟のファルコを救うために決死の思いでジークの叫びを阻止しようとしたのだ。コルトの思いに苦悶の表情を見せるジークだったが、目的を達成するためには仕方がない。ジークは決意を決め、空気をも震わせる咆哮をあげるのだった。

 まばゆい光に包み込まれ、脊髄液を口にした人々が次々に巨人と化していくシガンシナ区一体。人々が有象無象の巨人と化していく壮観なアニメーションとは対照的に、ファルコを抱きしめるコルト、手を差し伸べるガビ・ブラウンといった人物が巨人になる一瞬に止め絵が多用されていたのが印象的だった。これによって、絶望が見事に演出されていたし、何より巨人も元は心の通った人間であることを視聴者に鮮明に意識させる役割を担っていた。

 ジークの叫びによって巨人化してしまったファルコ。テオ・マガトらの奇襲によって再びジークは倒れ、戦いの集結を悟ったライナー・ブラウンは、自らの役目を終えファルコに鎧の巨人を継承させることを決意する。それはつまり、自分の死と引き換えにファルコを助けるということだ。そんなライナーの前に、すでにボロボロの状態のポルコが立ちふさがる。兄のマルセルの記憶を辿り兄の自分に対する思いを知ったポルコは、ライナーの変わりに巨人となったファルコに捕食されることを選ぶのだった。

 それも束の間、エレンはライナーの攻撃を硬質化で受け流し、息をひそめていたジークの元へと駆け寄っていく。しかし、エレンの視線の先には対巨人ライフルを構えるガビの姿が。そこから大きな発砲音とともに、エレンの首が撃ち抜かれる。座標へと繋がる原作でも印象的なシーンだけに、MAPPAがどう描いてくるのか見どころのひとつだったように思うが、走馬灯のように様々な記憶が流れるように映し出される一連のシーンは、音と映像が重なり合い神秘的な映像美を作り上げていた。特にエレンの瞳の緻密な描写は、瞬きに至るまでMAPPAの真骨頂とも言える作画となっていて、それはさながら映画のワンシーンを観ているようでもあった。

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