『DCU』阿部寛演じる新名は黒幕か、理想のリーダーか 部下への厳しくも一貫した眼差し

『DCU』阿部寛は黒幕か、理想のリーダーか

 まさかの主人公が黒幕と思わせるような展開で始まった『DCU』(TBS系)。隊長の新名(阿部寛)をダークヒーローと決めつけるには、判断材料が不足している。瀬能(横浜流星)が考えるように新名がスパイであったのなら、15年前に瀬能の父親と成合(吉川晃司)を死に追いやったのも新名だったことになる。しかし、余裕の表情で「思い出してみろよ」と言い放つ新名には、何やら秘めた考えがあるように思える。「真実は水の中にある」とは新名の弁。波乱含みの第2話で水中に秘められた真実は何だったのか。

DCU

 淡水から海水へ。第2話の舞台となったのは石川県の能登半島。密漁者と戦う地元漁師のリーダー島田(須田邦裕)が死体で見つかる。現地に建設予定の水産研究所はロシア政府高官が視察に訪れる予定で、5日以内に事件を解決しなくてはならない。遺留品の捜索に当たる中、技能実習生のサンチェス(フェルナンデス直行)に疑いの目が向けられる。サンチェスは島田とともに漁場をパトロールしており、事件当夜に夜光虫を見たと証言。波の高い磯に夜光虫は現れないため、新名はサンチェスが嘘をついていると考える。

 外国人技能実習生に関しては、労働基準監督署の調査で約7割の事業所に違法労働があったことが報じられた。技能実習生を含む外国人労働者の問題はドラマで取り上げられる機会も増えており、『MIU404』(TBS系)第5話や『TOKYO MER』(TBS系)第7話で、彼らの姿を通してこの国が抱える矛盾を摘出したことは記憶に新しい。本作のサンチェスは、偏見や差別にさらされながら、島田がいなくなった後もアワビの漁場を守り続けていた。

 島田の背中にあった刺し傷は二本鉤の形状と一致。二本鉤はアワビの天敵であるタコ漁に使うもので、サンチェスも同じものを使用していた。凶器となった二本鉤は左利きの人物が使用しており、サンチェスも左利き。証拠がそろい、サンチェスが犯人であることは間違いないと思われた。しかし、犯人は驚きの人物で、まさに「灯台下暗し」の言葉通りだった。事件や犯罪が発生した時、外国人に疑いの目が向けられることは、ここ日本では残念ながらまだある。血痕や犯罪の証拠は波に洗い流されていたと思われたが、半月の晩に水の中から現れた真実がサンチェスの潔白を証明した。

 真犯人を探り当てるきっかけになったのは、新名から瀬能への指示。地元警察の坂東(梶原善)に「張り付いて、本物のデカのやり方を学べ」と言う一方、坂東には「(瀬能は)独特な嗅覚で決定的な証拠を探しあてたりする」と話す。瀬能が溺れかけた子どもを助けようとした時には「すぐに坂東さんに合流しろ」と言い、「俺は坂東さんに張り付いて学べと言ったんだ」と念を押す。新名の種明かし後に振り返ると、これらが誰についての指示であるかは一目瞭然だ。地元警察と別捜査をすると言ったのも当然で、ホシの大本命は最初から坂東たちだったのだ。

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