『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』が示した、クロスオーバー作品の新たな可能性

『スパイダーマンNWH』が示した可能性

 迫真的な演出をとり入れたサム・ライミ版の『スパイダーマン』、それを受け継いで現代的なメロドラマとしての魅力にフォーカスした『アメイジング・スパイダーマン』、そして多様な人種がひしめく青春学園ドラマとしてのMCU版『スパイダーマン』……それぞれに異なる魅力と性質を持つシリーズだが、これらは全て、大いなる喪失を乗り越えて、強い心で他人のために善い行いをするという、『スパイダーマン』の本質的なエピソードと、ヒーローの本質に迫る結末へとたどり着くのである。この描かれ方がされたことで、本作のクロスオーバーの試みは、単なるファンサービスやビジネス上のメリットなどを超え、しっかりと『スパイダーマン』の観客へ向けた、意義のある内容に着地することができたといえるのではないだろうか。

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム

 このような、現実の状況をも巻き込んだ影響関係は、本作だけにとどまらない。トビー・マグワイアが演じた『スパイダーマン』シリーズのサム・ライミ監督が、本作にも登場したドクター・ストレンジを主人公とするシリーズ第2作『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022年公開予定)を手がけているのだ。マーベル・スタジオの原型となるヒーロー作品を作り上げた、もはや伝説といえるクリエイターが、新たにMCUでどのようなヒーロー映画を作り上げたのか、期待したいところだ。

 さらに、ソニー・ピクチャーズ アニメーションでは、フィル・ロード&クリストファー・ミラー製作の『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』(2022年公開予定)をはじめとする、新たな2部作を送り出す。『スパイダーマン』を起点に、あらゆる才能が混じり合う、“現実の”クロスオーバーの行方にも注目していきたい。

■公開情報
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』
全国公開中
監督:ジョン・ワッツ
脚本:クリス・マッケナ、エリック・ソマーズ
製作:ケヴィン・ファイギ、エイミー・パスカル
出演:トム・ホランド、ゼンデイヤ、ベネディクト・カンバーバッチ、ジョン・ファヴロー、ジェイコブ・バタロン、マリサ・トメイ、アルフレッド・モリーナ、ウィレム・デフォー、ジェイミー・フォックス
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
原題:Spider-Man: No Way Home
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