『その年、私たちは』犬と大量のナツメで演出される想い 新たに始まったウンとヨンスの恋

『その年、私たちは』再び恋に落ちる2人

 心の温度をじんわりと上昇させ、終わった後は適温を保ったまま心地よく胸いっぱいにしてくれるNetflix配信中の韓国ドラマ『その年、私たちは』。週始まりである月・火の夜中配信にもかかわらず、リアルタイムで視聴する人も多いようだ。第12話の題名でもある「ビギンアゲイン」のように、まさに週のスタートを切るのに相応しい回となった。第11話とともに振り返りたい。

 それぞれの思いを取りこぼさない本作だが、今回はクク・ヨンス(キム・ダミ)が抱えるチェ・ウン(チェ・ウシク)への募る想いが、大量の“ナツメ”とともにこぼれてしまった。ヨンスの気持ちをひとつひとつ拾い上げるようにウンが向かった先には、ナツメの正体を知らせてくれたハルモニ(ヨンスの祖母)の姿がーー。この連鎖の演出に胸を打たれたのは私たちだけではない。何も起こさないようにしていたウンは、何かを起こすことにしたのだ。それが、ヨンスに「僕を愛してほしい」と、ヨンスに愛されたいと願いのような告白だった。好きだとか愛してるではないウンらしさが詰まった言葉は、想いまで波動に乗せて心に響く。届いた瞬間にそれが振動となり、一杯になったヨンスの気持ちがポロポロと涙となってあふれ出してしまう。

 ウンは6歳の時に、実の父親から街の中に置き去りにされたまま捨てられてしまった。これが、ヨンスと友達になる選択した理由であり、育ての両親がウンに特別な思いがある理由であり、散歩中に捨てられて自ら外に出られなくなった犬のチョンチョンに自分を重ねた理由である。ウンが一歩踏み出すのに必要なもうひとつの告白となった。心の傷を抱えたウンの世界に入ってきたヨンスは、また少しずつウンの世界を色付けしていく。真っ暗闇でもヨンスがいれば、昼よりも明るく、美しく輝くのだ。

 片思いは楽しくて素晴らしいと思う日もあるけれど、辛くて、死ぬほど辛くて、結果辛いが勝っても諦めきれない。好きになるのも嫌いになるのもコントロールできたらどれだけ楽だろう。そんな思いを代弁してくれたNJ(ノ・ジョンウィ)とキム・ジウン(キム・ソンチョル)。周りに本心を見透かされて普段飲まない酒を酔うまで飲んでみたり、ウンに挑発してみたり、苦しむジウンはついに体調まで崩してしまう。このタイミングで、ウンからヨンスとヨリを戻したと報告されたジウンは、「消えてくれないか」と冷たく当たるが、ウンは消えてはくれなかった。そうだ、この二人は相手が苦しんでいる時、いつもお互いの前からいなくならない。その余計なお世話に、何度も救われてきた。ウンとジウンの関係を恋敵になんて収めることはできない。

 ヨンスではなくヨンスの視線の先を追いかけるようになったジウンは、自分の気持ちに決着をつけるのだろうか。再編集されたドキュメンタリーの映像で、ジウンの視線の先を確かめる部下のチョン・チェラン(チョン・へウォン)。好きな人の視線を追いかけるのは、自分には向いていないとも言える。それぞれの矢印は一方通行だけれども、ジウンには誰かの矢印の先に自分がいることに気づいてほしい。誰かに愛されるあたたかい世界があることを知る日が来てほしい。

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