『スパイダーマンNWH』日米で年始からヒット ピクサー新作は劇場公開断念で業界に変化?

オミクロン株、北米興行収入に大きな影響?

 今週末の初登場作品は、ジェシカ・チャステイン主演の女性スパイ・アクション映画『355』。ペネロペ・クルス、ファン・ビンビン、ダイアン・クルーガー、ルピタ・ニョンゴといった国際色豊かな豪華キャストのアンサンブルが話題だが、3日間の興行収入は480万ドルで第3位のスタートとなった。

 監督・脚本は『X-MEN』シリーズのサイモン・キンバーグ。作品の完成度をめぐっては評価が分かれており、米Rotten Tomatoesでは批評家スコアが26%、しかし観客スコアは82%という高水準となった。観客の出口調査では76%が「観る価値あり」と回答しているから、口コミでの動員増加に期待がかかる。配給のユニバーサル・ピクチャーズは北米で早期の有料配信を開始する戦略を採っているため、そちらでの反応も気になるところだ。

 そのほか今週末のポイントは、1月14日に日本公開となる『ハウス・オブ・グッチ』が第10位に返り咲き(前週第12位)、北米興収5000万ドルを突破したこと。一時は渋い推移かとも思われたが、大人向けのドラマ作品としてはコロナ禍で最高の成績となっている。

 一方、オミクロン株と劇場興行の関係性に関する大きな話題として、ディズニーがピクサー最新作『私ときどきレッサーパンダ』の劇場公開を見送り、ディズニープラスでの配信に切り替えることを決定した(リリース日は変わらず3月11日)。ピクサー作品の劇場公開が断念されるのは『ソウルフル・ワールド』(2020年)、『あの夏のルカ』(2021年)に続いて3度目だ。ディズニー・アニメーション・スタジオ製作の『ラーヤと龍の王国』(2021年)『ミラベルと魔法だらけの家』(2021年)は劇場と配信の同時展開だっただけに、社内での格差も問題だろう。

 『私ときどきレッサーパンダ』はファミリー向けの映画であり、またピクサー映画のポテンシャルを鑑みて、ディズニープラスの契約者獲得に使用されている感も否めない。しかし、ここにきてディズニーが再び劇場興行に及び腰になりつつあることは今後の業界にいかなる影響を及ぼしうるだろうか。春にかけてディズニーは『ナイル殺人事件』や『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』を、ソニーは『アンチャーテッド』を、ワーナーは『THE BATMAN-ザ・バットマン-』『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』などを控えている。今この時点での心配が、単なる杞憂に終わってくれることを祈るばかりだ。

北米映画興行ランキング(1月7日〜1月9日)

1.『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』
3301万ドル/4012館/累計6億6875万ドル/4週/ソニー

2.『SING/シング:ネクストステージ』
1195万ドル/3713館/累計1億901万ドル/3週/ユニバーサル

3.『355』
480万ドル/3145館/累計480万ドル/1週/ユニバーサル

4.『キングスマン:ファースト・エージェント』
327万ドル/3040館/累計2509万ドル/3週/20世紀スタジオ

5.『American Underdog(原題)』
241万ドル/2728館/累計1874万ドル/3週/ライオンズゲート

6.『マトリックス レザレクションズ』
186万ドル/2875館/累計3431万ドル/3週/ワーナー

7.『ウエスト・サイド・ストーリー』
141万ドル/2290館/累計3215万ドル/5週/20世紀スタジオ

8.『ゴーストバスターズ/アフターライフ』
114万ドル/1501館/累計1億2506万ドル/8週/ソニー

9.『リコリス・ピザ』
102万ドル/772館/累計819万ドル/7週/UAR

10.『ハウス・オブ・グッチ』
63万ドル/607館/累計5008万ドル/7週/UAR

(※本記事の興行収入データは1月10日未明時点の速報値であり、最終確定の数値とはやや誤差が生じる可能性があります)

参照記事

https://www.boxofficemojo.com/weekend/2022W01/
‘Spider-Man: No Way Home’ At $668M+ Sinks ‘Titanic’ & Looks To Take Out ‘Infinity War’ Next; ‘355’ DOA $4M+|DEADLINE
‘Spider-Man: No Way Home’ Leaps To $1.53B WW For No. 8 On All-Time Global Chart – International Box Office|DEADLINE
Pixar’s ‘Turning Red’ Skips Theaters & Heads To Disney+|DEADLINE

■公開情報
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』
全国公開中
監督:ジョン・ワッツ
脚本:クリス・マッケナ、エリック・ソマーズ
製作:ケヴィン・ファイギ、エイミー・パスカル
出演:トム・ホランド、ゼンデイヤ、ベネディクト・カンバーバッチ、ジョン・ファヴロー、ジェイコブ・バタロン、マリサ・トメイ、アルフレッド・モリーナ、ウィレム・デフォー、ジェイミー・フォックス
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
原題:Spider-Man: No Way Home
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