チャン・ギヨン、イ・ジョンジェ、チョン・ヨビンら、2021年注目韓国作品で輝いた俳優5選

2021年に活躍した韓国人俳優5選

 2021年ももう終わるが、今年も心温まるラブストーリーから背筋が凍るようなパニックスリラーなど、さまざまなジャンルの韓国ドラマや映画が配信され、韓流ファンを楽しませてくれた。そこで今回は、今年配信されたドラマや映画でインパクトを残し、今後の活躍を見届けていきたい5人の俳優を紹介したい。

『九尾の狐とキケンな同居』チャン・ギヨン

 2021年に注目を集めた俳優の1人はチャン・ギヨンではないだろうか。『恋愛ワードを入力してください~Search WWW~』(2019年)で、イム・スジョンの年下の恋人、パク・モゴン役で注目されたギヨンだが、Amazon Prime Videoで配信中のドラマ『九尾の狐とキケンな同居』(2021年)で、新たな魅力を発揮した。

『九尾の狐とキケンな同居』IQIYI INTERNATIONAL SINGAPORE PTE. LTD. All rights reserved

 本作で、ギヨンは人間になるために999年間生きてきた九尾の狐、シン・ウヨ役を演じる。長い年月をかけて人間の精気を玉に集め、あと一歩で人間になれる……というところで、ハプニングが起き、大学生のイ・ダム(イ・ヘリ)に大事な玉を飲み込まれてしまう。その玉をダムから取り出すべく、二人の奇妙な同居生活が始まる。

 これまでギヨンは、いかにもモテそうな好青年役が多かったように思うが、今回は999歳という設定。もちろん見た目はそのままなので若いのだが、ダムから「オルシン(年配者への尊称)」と呼ばれる役であり、妖怪といわれる九尾の狐をどう演じるのか、注目していた。

 ゆっくりとした話し方、感情を最小限に抑え、人間っぽさを出さずに九尾の狐らしさを醸し出す表情の作り方、なんといっても手を後ろに組んでゆったり歩くオルシンらしい歩き方がツボに入った。物語の中でも、他の人の姿に変身したウヨを、ダムが歩き方で「オルシン?」と見破るところがあるほど特徴的だ。

 ダムとの同居生活を通してウヨが次第に人間らしくなっていく様子を、ギヨンは丁寧に演じている。そして人間っぽさを極力抑えてはいるものの、ダムに向けられるウヨの笑顔は値千金だ。また本作以外では今年、映画『甘酢っぱい』(2021年)で、チャン・ギヨンにしては珍しいダメ男を演じて新境地を開いている。こちらもあわせてチェックしてほしい。

『イカゲーム』イ・ジョンジェ

『イカゲーム』Netflixにて独占配信中

 映画『若い男』(1994年)で4つの映画賞で新人賞を獲得して注目されたイ・ジョンジェ。キアヌ・リーブスとサンドラ・ブロックによるリメイクで知られる映画『イルマーレ』(2000年)では、チョン・ジヒョンと共演、時空を超えた心温まるラブストーリーを展開。その一方で、映画『10人の泥棒たち』(2012年)では、韓国を拠点に活動するずる賢い窃盗団の一人として出演。『イルマーレ』で恋模様を演じたチョン・ジヒョンと今度は泥棒仲間となり、時に罵倒し合うシーンにアッと驚いた。イ・ジョンジェは、役によってまるで別人のようになる俳優なのだ。

 そんなイ・ジョンジェが新たな顔を見せてくれたのが、大ヒットを記録してNetflixで配信中の『イカゲーム』(2021年)だ。長年勤めた会社を解雇されて以来まともな仕事に就くことができず、ギャンブルばかり。妻とは離婚し、借金だらけで最愛の娘の誕生日にまともなプレゼントを贈ることができない、冴えない中年男・ソン・ギフンを演じている。

 ある日、勝てば大金を手に入れることができるゲームに参加しないかと誘われ、借金取りに追われる生活に疲れていたギフンは、思わず参加。「ゲームに負けたら即死亡」という過酷なデスゲームの戦いの火ぶたが切っておろされる。

『イカゲーム』Netflixにて独占配信中

 前半、ギフンはお金にだらしないダメな男性として描かれるが、話が進んでいくうちに実は情が深く、心優しい人物だということが分かってくる。ゲームが進んでいく中、勝つために邪魔者扱いをされる年配者や女性をかばい、フェアな戦いを挑んでいく。

 物語の中で、ジョンジェが演じるギフンのターニングポイントは4回ある。自堕落な生活を送っているギフン、ゲームになんとしてでも勝ち残らなければ……と決意し、自身が持つ知識を駆使するギフン、最終的に大金を手に入れたものの、大切なものを失い自暴自棄になるギフン、そしてゲームの黒幕となった人物と再会することで、新たな目標を見出すギフン。

 どれも同じ人物なのに、それぞれ全く違う表情を見せて演じているジョンジェの演技力はやはりすごいと再認識をした。血が飛び散り、目を覆ってしまうようなシーンが多い本作だが、俳優イ・ジョンジェの表情の違いにフォーカスして、心の動きを読んでいくのも面白いかもしれない。

キム・ドンウク『君は私の春』

『その男の記憶法』(c)2020MBC

 『コーヒープリンス1号店』(2007年)で従業員役を演じ注目されたキム・ドンウク。『客ーザ・ゲストー』では、霊媒師の家に生まれ、パク・イルドと呼ばれる悪霊と戦うユン・ファピョンを演じ、『チェックメイト』(2019年)では、不正を許さない正義感あふれるチョ・ジンガブをユーモアたっぷりに演じた。

 そんなドンウクが『その男の記憶法』(2020年)で、過剰記憶症候群を患い、暗い過去を背負うニュースキャスター役を好演。スーツをビシッと着こなし、知的な雰囲気を醸し出すキム・ドンウクの沼にハマった人もいるのではないだろうか。

 その流れで注目したいのが、Netflixで配信中の『君は私の春』(2021年)。精神科医であるチュ・ヨンド役を演じている。

『君は私の春』予告編 - Netflix

 ヨンドのクリニックが入るビルに住んでいるカン・ダジョン(ソ・ヒョンジン)とダジョンに好意を寄せるチェ・ジュン(ユン・パク)。3人はある事件に巻き込まれるのだが、それをきっかけに、ヨンドは精神科医としてダジョンをさりげなくサポートをすることになり、やがて2人の間に強い絆が生まれていく。

 本作はサイコホラーのような描写が無きにしもあらずだが、ヨンドが精神科医として発する言葉の数々が美しく、癒される。少し低めの落ち着いた声のドンウクに、こうしたセリフがマッチするのだ。ヨンドとダジョンの子どもの頃の過去や、乗り越えなければならない大きな壁を思うと涙が出てしまうこともあるのだが、そんな中でも繰り広げられる2人のコミカルな掛け合いが物語のスパイスとなって利いている。

 ダジョンにからかわれて憮然としたり、逆にダジョンを言い負かして得意気な表情を見せたり……。演技派のドンウクがきめ細かに見せる表情がとても魅力的だ。『その男の記憶法』とは違った角度で大人の男性を演じているキム・ドンウク。魅力的な声で放つ美しいせりふの数々に注目してほしい。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アクター分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる