『岸辺露伴は動かない』の熱狂が帰ってきた 高橋一生×笠松将、実写としての圧倒的な説得力
最大の山場となるのは、陽馬が露伴にトレッドミルで再戦(リベンジ・マッチ)を挑む場面。陽馬の得体の知れないヤバさを感じつつも、「(だから)絶対におもしろい」と好奇心が勝ってしまう露伴。筆者が震撼したのは、その後の露伴、つまりは高橋一生の表情だった。露伴はヘブンズ・ドアーの能力で陽馬が邪魔な存在を取り除いてきたことを知る。スポーツジムのガラスを割り(笠松将のバック走が見事!)、命を賭けた戦いを望む陽馬に、露伴は恐怖で慄きながらも自身に湧き上がる好奇心を「反省」している。まさに「好奇心は猫を殺す」。越えてはならない「レッドライン」。そんな露伴の心情が同居した複雑な感情表現を、高橋一生は上擦った声と高揚と恐怖が入り混じった表情で体現して見せる。リアリティを持って。
振り返れば第3話「D.N.A」には「まったく……僕が鍛えてる漫画家でよかったよ」という露伴のセリフがあった。それはこの第4話「ザ・ラン」、さらにはこのシリーズ全体を連結させる要素。第1話から第3話では、物語を繋ぐ縦軸として泉京香(飯豊まりえ)の彼氏・平井太郎(中村倫也)がいた。今回の新シリーズで、その平井太郎の役割を担っているのが、六壁坂村の妖怪伝説。先ほど「第4話でメインとなるのは」と記したが、驚くのは第6話「六壁坂」の原作エピソード導入部分がすでにこの第4話で展開され始めていることである。そこは脚本を手掛ける小林靖子の大胆かつ緻密な作劇の素晴らしさにほかならない。前シリーズに引き続き、ジョジョ愛に溢れた小ネタも随所に散りばめられているのだが、そこは第5話「背中の正面」での記事で言及していくことにしたい。
そして、最後に。今回のシリーズでキーワードとなっているのが「場所」という概念。陽馬は六壁坂をお気に入りのランニングコースとしていたことがラストで明らかになる。かつて荒木が橋本陽馬を「居る」と表現していたことに何か運命性を感じずにはいられないのだ。
■放送情報
『岸辺露伴は動かない』
NHK総合にて放送
第4話「ザ・ラン」 12月27日(月)22:00~22:49
第5話「背中の正面」 12月28日(火)22:00~22:49
第6話「六壁坂」 12月29日(水)22:00~22:49
(第1~3話:2020年12月放送)
出演:高橋一生、飯豊まりえ
第4話ゲスト:笠松将
第5話ゲスト:市川猿之助
第6話ゲスト:内田理央
第4話:真凛、中村まこと、増田朋弥、小水たいが、濱正悟、春木生
第5話:栄信、渡辺翔
第6話:渡辺大知、中島歩、井上肇、白鳥玉季、吉田奏佑ほか
原作:荒木飛呂彦『岸辺露伴は動かない』
脚本:小林靖子
音楽:菊地成孔
演出:渡辺一貴
人物デザイン監修:柘植伊佐夫
制作統括:鈴木貴靖、土橋圭介、平賀大介
制 作:NHK エンタープライズ
制作・著作:NHK、ピクス
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