『岸辺露伴は動かない』の熱狂が帰ってきた 高橋一生×笠松将、実写としての圧倒的な説得力

『岸辺露伴は動かない』の熱狂が帰ってきた

 あの熱狂が帰ってきた。高橋一生が主演を務める『岸辺露伴は動かない』(NHK総合)の新シリーズについてである。

 2020年の年末放送では、生粋の原作ファンをも唸らせ、荒木飛呂彦による『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズ(集英社、以下『ジョジョ』)を知らない層へも広く話題となった本作。「2021年1月度ギャラクシー賞月間賞」を受賞し、続編が待望視されていた中での8月の新作発表だった。そのアナウンスと同時での各話ゲスト発表に、10月の新ビジュアル、11月のエピソード解禁と段階を踏んでのリリースも素晴らしいが、そこに相乗効果を生んだのが、アニメ『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』のNetflix全世界独占先行配信もまたこの12月であったこと。ほかにも『ウルトラジャンプ』(集英社)でのスピンオフ始動など触れたいトピックはあるが……『ジョジョ』ファンにとっては、『ストーンオーシャン』と『岸辺露伴は動かない』という2大巨大コンテンツが、極上のエンターテインメントとして大きな熱狂を生んでいるのである。

 今回の新シリーズは第4話「ザ・ラン」、第5話「背中の正面」、第6話「六壁坂」の3編で構成される。ただ、念頭に置かなければいけないのは、第4話から『岸辺露伴は動かない』を初めて観始める人、つまりは初めて荒木飛呂彦作品に触れる人がいるということだ。

 第4話は、露伴邸に不動産屋の2人が訪ねてくるところから始まる。超有名漫画家であることは知っているが「岸田ゴハン」と名前を間違えて覚えている脇の甘い、意地の悪い不動産屋だ。この2人を相手に露伴は底意地の悪さ、プライドの高さ、知的欲求からくる好奇心をあらわにし、さらには「ヘブンズ・ドアー」を発動させ本にして読む。これは第1話「富豪村」の冒頭で露伴邸に泥棒2人が「居空き」にやってきて露伴の癇に障る一言を言ってしまうシチュエーションと酷似している(というか、演じている2人も中村まこと、増田朋弥と同じ俳優)。

 筆者が言いたいのは、初心者でもわかるように、露伴の人柄をタイトルが出るまでの7分で説明してしまう親切心。そこに「この岸辺露伴が……金やちやほやされるためにマンガを描いてると思っていたのかァーッ!!」といったセリフを差し込むことで、原作ファンも納得させてしまう。そして、それはこの1年の間「ずっと岸辺露伴という人間から離れないでいることができた」と語る、高橋一生が演じることで説得力を持って成立していることでもある。

 第4話でメインとなるのは、会員制のスポーツジムで露伴が駆け出しのモデル橋本陽馬(笠松将)と出会うエピソードだ。荒木は原作コミックのあとがき的にある「解説」の中で、「80年代『ジョジョの奇妙な冒険』で目指していた、筋肉キャラクターをここに来て復活させてしまいました。」「『橋本陽馬』。どこかに居る感じがします。本当に恐ろしいキャラだ。」と綴っている。

 まず触れたいのは、その陽馬の恐ろしさが実写としてありありと表現されていたことだ。ランニングジャンキーの如く、走ることに取り憑かれていく陽馬は、段々と常軌を逸していく。象徴的なのは、彼女のミカ(真凛)のマンションをボルダリングの部屋にしてしまうシーン。徐々に冷淡になっていく陽馬の表情と喋り方、「チッ」という舌打ちと口癖となっていく「邪魔だな」、なによりも「走る身体」に「デザイン」された鍛え抜かれた肉体美が不気味な妖艶さを醸し出している。

 演じる笠松将のInstagramには高橋一生との微笑ましいツーショットとともに、トレーナーを付けての肉体作りであったことが触れられている。笠松将としては、この27日の放送前日に『青天を衝け』(NHK総合)最終回での主役級の活躍があり、「走り続ける」という点で渋沢栄一(吉沢亮)の跡を継いでいるなと奇妙な運命性を感じてしまった。

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