岡田将生が2021年に与えた驚き 『まめ夫』『ドライブ・マイ・カー』『聖地X』で新境地に

岡田将生が2021年に次々と与えた驚き

 コロナ禍によって、不安定な日々が続く世の中。いまだエンターテインメント業界も楽観視できない状況にあるが、それでも、映画、ドラマ、演劇にと、この2021年も多くの俳優から大きな感動を与えてもらった。特に印象に残っているのが、岡田将生である。今年の岡田は完全に、“ゾーン”に入っていた。

『CUBE 一度入ったら、最後』(c)2021「CUBE」製作委員会

 まずはざっくりと、彼の今年の出演作を列挙してみよう。1月にドラマ『書けないッ!?〜脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活〜』(テレビ朝日系)が始まり、ほぼ時を同じくして志尊淳とのダブル主演作『さんかく窓の外側は夜』が封切られた。坂元裕二脚本のドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系)で“元夫の一人”を演じてお茶の間での注目を集め、SF映画『Arc アーク』が公開。夏には三浦大輔演出の舞台『物語なき、この世界。』で座長を務め、世界中を席巻した映画『ドライブ・マイ・カー』が公開となり、映画ファンのみならず、岡田の“ヤバさ”を誰もが知ることとなっただろう。そして秋に入り、人気ドラマシリーズ『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』(テレビ朝日系)の第1話にゲストとして顔を見せた直後、海外のヒット映画のリメイク作『CUBE 一度入ったら、最後』が公開され、主演を務めた『聖地X』が立て続けに公開。主演舞台『ガラスの動物園』が上演中の現在に至るーーといった具合である。

『Arc アーク』(c)2021 映画『Arc』製作委員会

 出演した作品の数も凄いが、演じたキャラクターの振れ幅もすごい。ミステリー・ホラー『さんかく窓の外側は夜』ではトラウマを抱え人間らしい感情を失った除霊師を演じ、軽妙洒脱なセリフと展開が話題となった『大豆田とわ子と三人の元夫』ではひねくれ者の弁護士役に。『Arc アーク』では不老不死を実現させる科学者に扮し、『ドライブ・マイ・カー』では問題のある若手俳優役を演じ、作品の大きな転換点を作る役どころを担った。『CUBE 一度入ったら、最後』では世の中に不平不満を持つ精神の不安定な若者に、『聖地X』では自由気ままな小説家志望の若者にと、いずれもクセが強いキャラクターに扮してきた。“性格俳優”としての地位を築き上げた1年だったのではないかと思う。

『聖地X』(c)2021「聖地X」製作委員会

 しかしその一方で、等身大の若者にも扮した。『物語なき、この世界。』で演じた主人公・菅原裕一は仕事のない役者なものの、そのわりには再会したかつての友人の前で虚勢を張り、演技論などを語ってみせる。客観的に見るとどうにも痛々しい男だったが、身に覚えがないわけではないーーそう感じた観客は筆者だけではないだろう。舞台に立つ岡田は正直に言ってスマートなのだけれど、ものの数分見つめていれば、チンケに見えてきてしょうがない。映像と違って生身だけでキャラクターを表現しなければならぬライブである演劇の場で、彼の真の実力を思い知ったものだ。

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