『ホークアイ』MCUドラマ内の評価は? 『ワンダヴィジョン』『ロキ』と作品性を比較

『ホークアイ』と他MCUドラマを比較

 11月24日から配信が開始されたディズニープラスのMCUドラマ『ホークアイ』初週の配信記録を、アメリカの分析会社Samba TVが発表した。それによると同作の視聴回数は、前作『ロキ』より40%下回る150万回だったとのこと。もっともこの数値は、スマートテレビでの視聴のみを対象としており、パソコンのブラウザなどからの視聴はカウントされていない。それでもこの結果を聞くと、『ホークアイ』がこれまでのMCUドラマに比べて残念な出来になっているのでは、と思ってしまうのではないだろうか。しかし実際はそうではない。ここでは、『ホークアイ』の魅力や課題に迫っていきたい。

視聴回数と作品の評価は別物

 まず指摘しておきたいのは、今回比較対象になっている『ロキ』は、ディズニープラス史上最高のオープニング成績を残した作品だということだ。同作は、配信開始から5日間の視聴回数250万回の新記録を樹立した。対してMCUドラマ1作目『ワンダヴィジョン』の初週視聴回数は160万回、2作目の『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』は180万回と、『ホークアイ』の150万回より上回ってはいるものの、やはり『ロキ』には遠く及ばない結果になっている。これは、シリーズ屈指の人気キャラクターを主人公とした『ロキ』が爆発的ヒットとなったというだけで、『ホークアイ』が作品として劣っているということを意味するものではないのだ。

ディズニープラス オリジナルドラマシリーズ『ロキ』(c)2021 Marvel

 実際、『ホークアイ』の批評家からの評価は高い。米映画批評サイトRotten Tomatoesでの同作に対する批評家の評価は92%フレッシュ(2021年12月9日時点)となっている。これは『ロキ』に並ぶ数値だ。さらに、現在配信されている4話のうち3つのエピソードが100%フレッシュを記録。『ロキ』には100%フレッシュのエピソードがないことから、作品の内容としての評価は『ホークアイ』のほうが高いと言えるのではないだろうか。ドラマは完結していないため、最終的な評価はまた変わるだろう。しかし今のところ、今後にも期待が持てそうだ。

立ち上がりの遅さと“謎”の少なさが初週の成績を鈍らせた?

 『ホークアイ』が初週に伸び悩んだ理由の1つは、物語の立ち上がりの遅さにあったのだろう。第1話では、本作の前提が丁寧に紹介された。そこで描かれたのは新キャラクター、ケイト・ビショップ(ヘイリー・スタインフェルド)のキャラクター性と彼女が巻き込まれる事件。そしてクリント・バートン(ジェレミー・レナー)の現状だ。2人の出会いで第1話は終了。ストーリー自体はほとんど進まなかったと言っていいだろう。初週は2話同時配信だったが、第2話の視聴回数は130万回と第1話をさらに下回っている。

『ワンダヴィジョン』(c)2021 Marvel

 ここで初週視聴回数が『ホークアイ』に近く、同じく2話同時配信だった『ワンダヴィジョン』との違いから、もう1つの理由を探っていこう。同作は「ワンダと(死んだはずの)ヴィジョンの結婚生活が描かれる」という前情報から謎だらけで、ファンの興味を引いていた。実際に第1話からシットコム風にその様子が描かれたのだが、ラストシーンで彼らの物語を“観ている”人物がいることがわかる。ここで視聴者は「これは一体なんなのか?」と思わされた。そしてその真相を探るべく、次のエピソードを観始めただろう。『ホークアイ』第1話のラストシーンには、そういった意味での求心力、視聴者の興味を強く引く“謎”がなかったと言える。また『ワンダヴィジョン』は、ストーリーが最終的にどこに着地するのか予測が難しかった。しかし『ホークアイ』に関しては、「ケイト・ビショップが2代目ホークアイになる」というコミックの設定が踏襲されることがほぼ確定している。ストーリーが本格的に動き出すまでが遅い、わかりやすい違和感がない、ざっくりとした結末がわかっている、という3点は、『ホークアイ』の初動を鈍らせた原因ではないだろうか。

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