『カムカムエヴリバディ』安子がるいを連れて大阪へ 村上虹郎演じる勇の純情
「この家を出てるいと2人で暮らすんじゃ」。勇(村上虹郎)の言葉に驚く安子(上白石萌音)。千吉(段田安則)に見合いを勧められ、美都里(YOU)には辛く当たられる。雉真家に安子の居場所はなく、近い将来、るいと引き離されてしまうことは容易に想像できた。
『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第22話。朝一番の汽車で安子は岡山を発った。向かったのは稔(松村北斗)が住んでいた大阪。母娘2人の孤独な逃避行に、口をついて出たのは稔との思い出が詰まった「On the Sunny Side of the Street」。<心配事は玄関に置いて/ひなたの道へと歩きだそう>。車窓から差し込む朝陽に照らされると、稔のことを思い出して自然と笑みがこぼれた。
勇の言葉は安子を心配してのものだった。安子に恋心を抱いていた勇は、安子を「義姉さん」と呼び、弟の立場で接してきた。そんな勇の隠れていた本心が別れ際にあふれ出した。「あんこ」と子どもの頃の名前で呼ぶと、「どねえしても困ったら帰ってくりゃあええ。そんときゃあ、わしがおめえをもろうてやらあ」と叫んだ。
どんな運命でも最後は自分が受け止めるから安心してくれというメッセージ。稔と安子が一緒になれるよう千吉に訴えるなど、勇は安子たちを見守ってきた。いっときは安子のことを諦めたようにも見えたが、誰よりも安子の幸せを願っていたのが勇だ。勇の思いを知って微笑む安子。言葉にならない2人のやり取りが美しかった。
けれども勇は安子の芯に秘めた強さを知っている。どんなに困窮しても決して自分に寄りかかることはないであろうことも。勇は自分の気持ちを押し通すことはしない。その勇が思いがけない告白をした裏には、これが最後になるという予感もあったのではないか。