『カムカムエヴリバディ』無音演出が突きつけた安子の心情 あまりに辛い「稔さん」の叫び
「ご無事で帰ってきてください」
「きっと帰ってくる。必ず帰ってくるから。大丈夫じゃ」
『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第4週「1943-1945」の始まりで、安子(上白石萌音)と稔(松村北斗)はそんな約束を交わしていた。その週の終わりに、稔の戦死の訃報が届くなんて。『あさイチ』(NHK総合)で朝ドラ受けを務める一人、博多華丸が触れていたように、第3週ラストの「安子と稔が一緒に暮らせたのはほんのひとつき足らずでした。短いけれど幸せな日々でした」というナレーションでそれとなく仄めかされていたとはいえだ。
雉真家に届けられた稔の戦死を告げる手紙。その事実にただ呆然とする勇(村上虹郎)と千吉(段田安則)。泣き叫ぶ美都里(YOU)。安子は一人何も考えられなくなっていた。
画面は演じる上白石萌音の表情をアップで捉える。涙すら出てこない、唖然。まだ悲しみの感情すらやってきていない、稔の死を受け止めたくない。そんな必死な表情にも思える。千吉の持つ手紙を黙って確認し、よろけながら後ずさり。障子にもたれかかり、しばらく立ち尽くした安子は雉真家を飛び出していく。
静寂を超えた、無音。その大胆かつ生々しい演出が安子の真っ白な脳裏をありありと映し出している。無我夢中で向かった先は、朝丘神社。稔の無事を日々祈り続け、彼からプロポーズを受けた思い出の場所だ。4年ぶりに再開した「基礎英語講座」の放送を聞き、安子は稔を思い続けていた。一つ英単語を覚えるごとに、稔が帰る日が近づいてくるーーそうして安子は彼の無事を信じ続けていたのだ。