『カムカムエヴリバディ』村上虹郎の“勇ちゃん”にもどうか希望を 次男がゆえの葛藤

村上虹郎の“勇ちゃん”にもどうか希望を

 画面は稔(松村北斗)がキャッチできなかった勇(村上虹郎)が投げた野球ボールから始まり、やがて互いに向き合う2人を映し出す。

「兄さんは気づいてねぇ思うけど……わし、あんこのことが好きなんじゃ」

 安子(上白石萌音)を巡る勇からの突然のカミングアウト。稔がボールを掴むことができなかったのは明らかな動揺と、弟の思いを受け止めることができないそのメタファーである。

 『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第2週では安子と稔の恋が燃え上がっていくのと並行して、戦争の影も徐々に色濃くなっていく。第10話では、ドイツがソビエト連邦に宣戦布告。安子の朝の日課である『基礎英語講座』の終わりには、西太平洋においてアメリカ、イギリス軍と戦闘状態に入ったという臨時ニュースが流れる。日本海軍がアメリカ海軍に対して行った真珠湾攻撃だ。結果は日本の勝利となるが、ここから太平洋戦争へと突入していく。

 戦争の影響で安子と稔を繋いでいた『基礎英語講座』はラジオから消え、そして夏の甲子園大会は中止を余儀なくされた。勇の最後の夏が思いもしない形で終わりを告げたのだ。描かれる時代が同じなのはもちろんあるが、安子の兄・算太(濱田岳)が向かうダンスホールや甲子園球児の無念の思いなど、細かな背景は違えど朝ドラ『エール』を思い出させる要素が『カムカムエヴリバディ』には多々登場している。

 突如夢が潰えた勇は神社の境内に座ってうなだれている。そんなところにひょこっと現れるのが安子だ。朝ドラ史上指折り数えるほどに鈍感ヒロインである安子は、勇からの好意はもちろん、彼が肩を落としている理由も知らない。安子が参拝して願うのは、出征した「たちばな」の菓子職人・菊井(杉森大祐)の無事、砂糖がなくても美味しいお菓子ができるように、それから「勇ちゃんが甲子園に行けますように」である。

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