鈴木伸之、『恋です!』でも多面的な魅力を発揮 獅子王は作品の中で最も複雑なキャラ?

『恋です!』多面的な魅力を放つ鈴木伸之

※本稿には『恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜』の第5話までのネタバレが含まれています。

 現在放送中の水曜ドラマ『恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜』(日本テレビ系)で多くの出演者の好演が堪能できるなか、俳優の鈴木伸之が異彩を放っている。弱視の盲学生ユキコ(杉咲花)と純粋な不良少年の森生(杉野遥亮)の恋を描く本作。鈴木が演じるのは、森生のライバルである、隣町の元“ボス”の金沢獅子王だ。最初こそわかりやすい、気性荒いヤンキーキャラだったものの、すでに第2話の時点で立ち往生していたユキコを見つけて車に乗せ、森生の家に送り届けるなど優しさが垣間見えるなど、一筋縄ではいかないキャラクターであることがわかっていた。

 鈴木伸之は『ろくでなしBLUES』(日本テレビ系)でテレビドラマデビューを飾ったときから、ヤンキー役に縁がある。しかし彼の演じる役柄は、本当は優しかったり良識があったりするキャラクターである場合が多い。『GTO』(フジテレビ系)で演じた草野のようなザ・好青年役もそうだが、大ヒットシリーズ『HIGH&LOW』で喧嘩には強いけど誰よりも仲間想いというソフトな部分を持つヤマトのような役を好演したことが、のちのキャリアにも反映されているように思える。

 『恋です!』の獅子王もヤマトの要素を多くはらんでいるが、より不器用で人間臭いキャラクターだ。第2話では、中学生のとき、森生の顔に傷をつけたことを明かしながらもそれから毎回“強い感情”を持って森生になにかと喧嘩をふっかけていたことがわかった。そのときは誤魔化されてしまったが、「もしかして……?」と思った仮定が第5話のラストでほぼ確信に変わる。どうやら獅子王が森生に抱いていた強い感情は、“恋心”なのではないかと。そのきっかけが、相手の顔に消えない傷をつけてしまったという後悔にはじまっているような気もする。しかもその申し訳ないという気持ちも、好きという気持ちも素直に伝えることができないから、拳(物理)で伝えてしまうという不器用さ。実は獅子王は、このドラマのなかで最も複雑な深みのあるキャラクターなのかもしれない。そして、そんな彼の多角的な魅力を体現できるのは、鈴木伸之が演じているからで、逆を言えば彼が演じているからこそ獅子王はそこにいるだけで優しさが滲み出ているようなキャラになっている。

 第3話では、もっと真っ当になろうと、就職をする獅子王。その後レンタルビデオショップの店長として慣れないながらも頑張る姿や、店に来るお客さん、そしてユキコの同級生に対する態度から誰よりも良識的な人物であることが描かれている。“ヤンキー”というレッテルを貼られてしまうと、それだけで社会に適応することは時に難しい。しかし、うわべだけで判断することが何より間違っていること、どんな相手も正しくなれるし、そこから正しい姿勢が学べることを、獅子王を通してこのドラマは私たちに教えてくれる。冷静に考えてみれば、獅子王は人と接する時にとても柔らかい態度だし、女性にも紳士的だからユキコの姉・イズミ(奈緒)が彼に恋をしてしまうのも無理はないのだ。

 第5話で彼女がジムで獅子王にトレーニングのアシストをしてもらうシーンなんて、鈴木伸之の筋肉と肉体美が凄すぎて、あんなことをされたら逆に力が入らなくなって大怪我してしまうぞとイズミの身を案じてしまうほど。しかし残念ながら、彼女はまた難しい相手を選んでしまったというわけになる……。

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